横暴で傲慢

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横暴で傲慢

『 今 す ぐ 来 い 』 これぞ究極のショートメッセージだ。 場所も時間も書いていない。とにかく “ 今すぐ来い ” 。ただ、それだけ。 毎度毎度、同じ文面……もとい、文字。それも5文字。 コピペ、若しくは再送信か……、いや…毎回打ってるな、あの人は。 なんて思いながら、B棟3階の生徒会室まで猛ダッシュ。 短い文字なのに律儀に漢字に変換しているあたり、彼の性格が表れている。 打つのが面倒なのかと思いきや、そうではない。 用件は端的かつ明瞭に。そんな人だ。 模範的な生徒会長でありながら、校内での携帯の使用禁止の校則を完全に無視する姿には驚いた。 そして、それを後輩である私に強要する姿にも。 そう…、あの初日の定例会の後――――… 『橘、携帯出せ』 「……え?」 『今後、お前が遅い時はLIME送る』 「え…、連絡先を交換するってことですか?」 『勘違いするな。生徒会のグループLIMEだから。個人的にお前のを知りたいわけじゃない』 『勘違いなんてしてませんよ!!!』 や、嘘。ちょっとした…。だけど、べつにときめいたりしたわけじゃない。 それに、そもそも、校内で携帯を使っているのが見つかれば即没収。ハイリスクだ。 可能であれば、その申し出はお断りしたいんですけど……。 「あの…大丈夫です。もう遅れないですし…」 『嘘つけ。どうせ遅れるだろ…、というか来ない気がする。仕事がある時は連絡するから。いいか、電源入れとけよ?俺が呼んだら速攻来い』 ……………横暴すぎにも程がある。 今日が初対面ですよ?会ってほんの1時間くらいなんですけど? 俺が呼んだら速攻来い、だと? 傲慢な態度。俺様、素敵!!……なんて思うわけない!! むしろ、「(遅れると/来ないと)決め付けないで下さい!!」と叫んでやりたかった。 だけど、次も友達と遊んで、しっかり遅れた私は、完全に彼の思惑通りだったみたい。 ――――これが、彼と出会った日のすべて。
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