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やっと着いた…。
上がった息を整える間もなく、扉を開ける。だって、コンマ1秒が死活問題だ。
『遅い!』
「すみません」とさえ言えなくなった、この怖すぎる空気に胃がやられる…。
キリキリと痛むそれを感じながら黙って立っていると、書類の束が飛んできた。
『コピーとって顧問に渡してくれ』
今日も澄ましたその顔でこちらを見もせず、そんなことをのたまうのは我らが会長様だ。
私の傍の机の上に飛ばされたその書類。
びっしりと書き綴られた活字体は彼の万能さを物語っている。
そして、私はこれから…、これをコピー。そして、顧問へ。
……………こんなの、ただの “ お遣い ” だ。
3年生で占められた本部役員、唯一の2年生。
実質、雑用係なのも分かっている。
だけど、こんな用事で、遅い急げ、と捲くし立てられるのは割に合わない。
『会長。これだけのために呼んだのですか?』
なんとなく…、だった。
だけど、おそらく…、いや、もしかしなくても、コレは言っちゃいけなかった…。
キーボードの上で跳ねていた指先が止まり、パソコン画面を見つめていた瞳が眼鏡越しにこちらを向く。
漆黒の髪色よりも深い色合いのその瞳の威力は絶大だ。
『何か言ったか?』
……………絶対に聞こえてた。
だけど、あえてのスルー。若しくは、もう一度言わせたい?
「いえ、何でもないで……」
『コピーが不満か?』
……………不満なわけじゃない。
ただ、傲慢に使われるっていうのに少し抵抗があるだけ。
と。思っていれば彼の口角が僅かに上がった。
澄ました顔を不敵に微笑ませた顔つきに良い予感などせず、悔しいけれどここは折れよう、と口を開く。
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