chapter01. お隣さんをたすけました。

7/11
前へ
/168ページ
次へ
 あれから1週間が経過した。  仕事にすこし余裕が出来たので趣味兼副業にしているアニメーション動画の制作に取り組んでいた。尺はどれくらいがいいか、物語の起承転結、そして細かい設定を決め構成をタブレットで詰めていた。  企業とかのアニメーションの制作方法は私は正直そんなに理解はしていない。ソフトの使い方やアニメーションの動かし方など手探りでやって今のやり方になっている。正直やり方が古いと言われることもあるだろうが、仕事というより趣味でやっている分好き勝手出来るからこそやりがいを感じる。    聡人はあれからちょいちょいうちに来る。  お酒を持ってくることもあれば、会社で貰ったというお菓子を持ってくることもあった。その度、一緒にご飯を食べた。4日前はテレビを見ながらお酒を飲んで時々会話をした。2日前はご飯を食べた後、テレビボードにあるゲームを2時間くらいやってセーブして 「セーブデータ消すなよ。」 と念押しして帰っていった。  ゲームを起動してセーブデータを見てみるとakitoと入力されているのを見て思わず笑ってしまった。      二人でいる時間は気を使うことが基本的にないから楽だった。会話の中でお互いの話もした。  聡人は某化粧品会社の企画マーケティング部で仕事をしていて主任という立場だということ。部下の企画をチェックし成功させる手助けをする合間に自分の企画を同時進行で進めて残業しないで帰るというルーティーン を会社で送っているらしい。 フリーランスでひたすら我が道を行く私には想像がつなかいなと思った。  いや、まず主任ならなんで酒飲んで梅雨の日に傘もささずにずぶ濡れで倒れてんのって思ったけどぼそぼそ喋る聡人の話を聞いていると何も言えなかった。  彼も私も共通するのは企画の成功は大前提として、その中でもクライアントが最優先ということだった。 商品を開発するのに、デザインやら広告やらイベントやらで期限も予算も限られた中で売れる商品を作る。 それを達成させるには下請け会社やイベント先の責任者やスタッフ、広告のためのデザイナーなど自分のところの会社だけではなく一緒に頑張ってくれるクライアントがいるからこそ良い商品が産まれる。 気持ちよく仕事をして貰いたいという思いはきっと私も聡人も等しくある。 しかしどれだけこちらが誠意のある対応をしたとして相手が人間である以上、相手が良い反応を示すとは限らない。    お酒を持ってきた日は少し疲れた顔をしていた。無口でぶっきらぼうな聡人はお酒を飲みながら疲れを混ぜてため息を吐いていた。 結構飲んでいたのを途中で無理やりストップさせてお酒の代わりに温かいほうじ茶をだして飲ませた。  ふっとタブレットの時計を見ると18時になろうとしておりシャワーに入りに部屋を出た。  脱衣所で服を脱いで洗濯機に放り込む。 浴室に入り鏡をみて腰まで伸びた濃い赤茶色の髪を洗いトリートメントをする。 顔を洗い週1でしている角質取りジェルで角質を洗い流し体を洗い浴室を出る。 マッサージクリームで顔をマッサージして洗い流し導入剤、化粧水、目元用美容液、乳液の順につけて髪を乾かし服を着る。 ボディクリームで念入りにマッサージをしてレモネードを作って煙草と一緒にベランダに出た。  今日は雨は降っていない。 それでもじめじめして顔をしかめる。煙草のメンソールが風呂上がりの喉にとてもよく響く気がした。
/168ページ

最初のコメントを投稿しよう!

956人が本棚に入れています
本棚に追加