chapter01. お隣さんをたすけました。

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 しばらく煙草を吸いながら空へ上る煙を眺めていたら2本目の煙草にも手を出してしまった。 亀の灰皿に煙草を押し付け火を消す。    ベランダから戻ると聡人はこくりこくりと船を漕いでいた。  ふっと思わず笑いが漏れて寝室に行き彼にブランケットをかけて仕事部屋からタブレットを持ってきてアニメーション作成の続きを聡人の隣でTVを見ながら取り掛かった。  絵コンテに取り掛かり1場面1場面丁寧に作る。こだわって作品を作りたい、自分の趣味で作成するもののほうが実際は力が入るのでめちゃくちゃいい出来になるというほうが実際のところ多い。  依頼された仕事は希望通りのものを制作することになるので、要望を事細かに聞いて制作してもイメージと違うから書き直し。なんてことも日常茶飯事で、人に寄ってはたかだか絵だろと下に見て契約金を安く描いてもらおうとして来たり大柄な態度で失礼極まりないことをいう人も少なくない。  だからこそ、基本的には私も相手も立場上win-winの関係を築けるように慎重に受けるか断るかをヒアリングするのが必要。受ける前ならなにも損益はでないから。  1時間くらい集中してたと思う、目頭を揉んで目をほぐしているとふっと右肩が重くなった。驚いて顔を向けると聡人の頭が乗っていた。  途端に顔に熱が集まる感じがして思わず離れそうになるのを疲れているからとぐっと堪えてタブレットをテーブルに置き様子を伺う。  黒い髪が頬をくすぐり耳元で寝息が聞こえる。鼻筋がハイライト入れてないのに艶っててまつげが長くきれいな顔をしていると改めて思った。こんなに間近で男性の顔を見る機会がないからか鼓動の音がうるさくてその音で起きてしまうんじゃないかと少し気が気ではなかった。    壁掛けの時計を確認する。22時。このままじゃ二人とも明日に響く。  とりあえず起きるように声をかけようか。 「聡人、起きて。」 「・・・・。」 「聡人、22時だよ。ベッドでちゃんと寝ないと明日に響くよー。」 「んー。」 「んーじゃなくてほら起きて。」  体をずらして抜け出し肩をつかんで軽く揺すると眉間に皺を寄せながらうっすら目を開けたのでさらに声をかける。 「聡人、起きて。明日も仕事でしょ?部屋のベッドで寝なきゃっ!?」  突然肩をゆすってた腕をつかまれ聡人と一緒に床に倒れる。思わず目をつぶる。どさっと音がして床にぶつかった肩が少しじんじんする。  体が体温で暖かくなる。  目をそっと開けると目の前には聡人の服越しではあるが胸板。近いしすごく熱い・・。ぐっと手で押すが背中と後頭部に手が回り抱きしめられ身動きが取れない。体が密着して聡人吐息が首元にかかりぞくぞくと何かが駆け巡る。体も顔も暑くて軽くパニックになる。 ・・・抱きしめられるとかいろいろ久々過ぎて、心臓が破裂しそうだ・・。
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