プロローグ

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プロローグ

今年もまた問題児が入学してきたらしい。生徒情報が記された紙を見ながらジェラルド・スノードロップは深い溜め息をついた。 「ヴァーグ・フォンテーヌ、ね…。」 を取得している優秀な生徒であり、ハーフエルフの男子生徒。頭もよく、魔力も人並み以上あり、強さもある。それ故に高慢な性格になっていなければ良いのだが、とジェラルドはもう一度溜め息をつく。 何も揉め事を起こさないと良いのだが、嫌な予感がしてならない。いくらジェラルドが生徒指導担当の教師だからとはいえ、毎度の如く面倒事を持ち込んでくるのは勘弁して欲しいものだった。 「やはりこの生徒はしばらくの間、近くで監視しておくのが妥当なのかもしれないな。」 いつものようにキリキリと痛む胃を押さえ、ジェラルドは(かぶり)を振った。今年も何やら面倒事を持ち込まれる予感がしたが、想像するだけで胃が痛くなってくるので、今は考えないことにした。 〝ヴァーグ・フォンテーヌ〟と書かれた生徒の情報が載ってある紙を机の上に置き、ジェラルドは鬱々とした表情を振り払ってゆるりと笑みを浮かべた。全生徒の情報は頭に入っている。今日の仕事は終えたので、夜の散歩にでも出掛けよう。 「…さて、今年はどんな生徒が来るのか。」
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