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頭領の告白
父親が、部下を呼び出してくるように、ランへと告げた。
その部下の名を聞いて父の思惑を察し、やれやれと思いつつも、それに従う。
一族だけで成り立っていたこの群れも、今や随分膨れ上がり、ここにはいない者も含めると、一つの国を作れそうなくらいにまでなっている。
ひとまとめにしてしまっては、どこの国でも脅威になりそうだが、カスミと名乗るランの父親は、そんな面倒な事態を避けるため、膨れ上がった仲間は適度に減らし、適当な理由をつけて、各国に分散させていた。
東洋の小さな島国生まれのカスミは、どの国でも目立たぬ黒髪と、真面目な顔立ちでありながら、背丈はそれなりにある男だが、その性格は容姿と裏腹に首を傾げたくなるようなところがある。
今から始まるであろう喜劇も、その一端だ。
ランは溜息をつきながら真っ白な髪を振り、その喜劇の舞台に無理やり引き出される男がいるはずの、とある部屋の扉を叩いた。
返事が返り、すぐに開いた扉の内側から、同じくらいの背丈の男が顔を出した。
背丈は同じくらいで肌色も同じく東洋のものだが、ランの猛々しさのある顔立ちと違い、優しい顔立ちの男だ。
並ぶと、この男の方が女々しさを覚える容姿なのだが、そんな見た目に騙されてはいけない。
今や、剣を扱うランやジュラと並び、実力で認められつつある男だ。
「どうしました? ラン?」
少しだけ目を見張る男の背後で、妙に慌てて何かを隠す大きな老人の姿が見えた。
それを見て、ランは居心地悪い思いで謝る。
「あ、取り込み中だったか? 済まない」
「いえ……まだ、興に乗っていませんでしたから、お気になさらず」
背後で動揺する老人とは違い、男はにっこりと笑い、穏やかに返した。
「何か、急ぎの用ですか?」
「急ぎではないんだが……エン、親父が呼んでる。大事な話があるそうだ」
目を見張る男エンの後ろで、老人がはっとして顔を上げた。
緊張したその顔に目を向け、ランは小さく頷く。
「……」
「ジャック。お前も、呼ばれている」
ジャックと呼ばれた老人は、皺皺の顔を歪めながら頷き、話が見えないエンの傍に歩み寄った。
男を部屋から出しながら、真顔で呼びかける。
「エン」
「はい……?」
真剣な顔で呼びかけられて戸惑うエンに、ジャックは重々しく言った。
「お前にどんな肩書がつこうと、儂はお前の師匠じゃ。それだけは、覚えておくのだぞ」
忘れようがない。
そう言いたげな男を促し、三人揃って頭領の待つ部屋に向かった。
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