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恐る恐る聞くと、瑞穂はぶんぶんと首を横に振って「大好きです!」と言った。
「嬉しいです、ありがとうございます」
「後これ、宜しければ皆さんで。間中さん以外にももう一人、俺の看病してくれた人いましたよね?」
「店長ですね。さっきの眼鏡を掛けた」
「ああ、あの人が。それに奥、事務所だと思うんですけど。皆さんの休憩の場を奪ってしまったので、そのお詫びとお礼に」
「そんな……お気遣いありがとうございます」
瑞穂はそのお礼の品も受け取ると、ニコッと微笑んだ。その笑顔にまた心がきゅっと締め付けられる。パッと視線を反らすと、奥から知らない女の従業員が出てくる。陽太と瑞穂が向かい合っている所を見て「もしかして!」と生き生きした声で言った。
「噂の熱中症の?」
「噂になってるんですか……」
「ちょっと、諏訪ちゃん」
諏訪、と呼ばれた女は人懐っこい笑みを浮かべると、瑞穂が持っている紙袋に視線を落とす。中身を見て「ラスクだ!」と子供のような無邪気な声で言った。どことなく朝比奈と似ている気がする。そんな二人から視線を反らして店内を見渡した。とある花に目が留まる。紫色の可愛らしい花だ。なかなか道端で見かけることのない花だが、一体なんて名前なのだろう。
「トリカブト、お好きなんですか?」
陽太が瑞穂を見ると、瑞穂が「ずっとご覧になられていたので」と続けて言った。
「トリカブトって猛毒なんですよね? 売っても大丈夫なんですか?」
「はい、猛毒の部分は切ってあるので問題ありません」
普通に考えたらそうか。陽太はトリカブトに近づくと、「綺麗な花ですね」と言う。瑞穂もトリカブトに近づいて頷いた。
「でもこんなに綺麗な花でも、花言葉は怖いんですよ」
「そうなんですか?」
「確かに良い花言葉もあるんですけどね。例えば、栄光とか騎士道とか。でも人嫌い、復讐、厭世家という意味もあります」
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