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朝比奈が肩に手を回してくると、陽太は鬱陶しく思いながら細めた目で朝比奈を見る。それから視線を反らして、閉じたパソコンをじっと眺めた。瑞穂のことを思い出す。たった一度しか会っていないが、顔は鮮明に覚えてしまった。声も雰囲気も何もかも鮮烈に覚えている。あの時感じた電気が走ったような衝撃。時間が一瞬止まった、と表現しても良いかもしれない。あれは間違いなく、一目惚れした瞬間だった。
「……惚れた」
「え、まじで!? 惚れたの!? 一目惚れ!?」
「馬鹿、五月蠅いッ!」
陽太は朝比奈の口に手を当てると、驚きのあまり立ち上がった朝比奈を強制的に座らせる。何事かと昼を食べ終え、残った昼休憩の時間を持て余している仲間たちがこちらを見た。陽太はそいつらに小さく謝ると、陽太の頬をつねった。
「痛っ」
「五月蠅いんだよ、お前は。もう少し声を抑えろ」
「ごめん、ごめんって」
陽太は朝比奈の頬から手を離すと、はぁっと溜息を吐く。
「恋煩い?」
「お前に呆れての溜息だよ」
朝比奈はけらけら笑うと、陽太はそのマイペースぶりにまた溜息を吐いた。
「よし、じゃあ親友として刈部の恋の手助けをしてやろう」
「いいよ別に。俺、間中さんとお近づきになろうとか思ってないから」
「何で!? せっかくの恋を。しかも一目惚れを!」
「だから五月蠅いんだよッ!!」
口を急いで塞ぐと、また辺りに引きつった笑みで謝る。それから朝比奈に向かって睨みを利かせた。
「普通、そこは付き合いたいとかなるだろ」
「あのなぁ……一目惚れって嬉しくないだろ」
「は? 言ってる意味が分かんないんだけど。俺、一目惚れされたら超嬉しいよ。舞い上がっちゃうよ」
「朝比奈はな。いいか、一目惚れっていうのは錯覚なんだよ」
朝比奈が眉間に皺を寄せてきょとんとした顔を作ると、陽太はテレビで得た知識を披露する。
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