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「一目見た相手の外面が好みだった時に、内面まで好みだと脳が勝手に妄想して恋をしたと錯覚する。それが一目惚れなんだよ。それってつまり、貴方の外見が好みですって言ってるもんじゃん。最低だろ」
「……確かに外見だけしか興味ないのは嫌だよな。俺も内面見てほしいし」
「だろ? だから一目惚れって、相手によっては嬉しくないんだよ。だから相手を不快にさせる可能性があるのなら、俺は近づかないでこの気持ちを断ち切る。その選択一本だ」
「え、でも別に内面も好きになれば問題なくない? これからゆっくりお互いのことを知って、もっと好きになればいいだろう。何せ相手は自分に好意があるって知らない訳だし、一目惚れされたって思ってもみないだろ」
正論を言われて、しばし硬直する。言われるとは思っていたが、やはりこうも言われると何て返そうか言葉に詰まった。
「……お、俺が嫌なの。そういう始まり方が」
「頑固か」
朝比奈に突っ込まれると、陽太は口をもごもごさせる。
「何考えてるのか知らないけど、一目惚れが例え錯覚でも、一目惚れすることってなかなか無いんだからその感情を大事にしなさいよ。ていうか、本能的に好きになったっていうのも一目惚れだろ? だったら尚更大事にしろって」
カチッと時計が昼休憩の終わりを指し、陽太はパソコンを開く。朝比奈は「無視すんなし」と小さく言いながら、自分のデスクに戻った。
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