第二章 加速

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「にしても、お前が熱中症でぶっ倒れたって聞いた時、まじで焦ったわー」  朝比奈が顔を真っ青にさせながら言うと、陽太は「悪い」と朝比奈に詫びる。 「でも本当に無事で良かった」 「間中さんのお陰でな」 「間中さんって看病してくれた?」 「そう」  陽太は前が進むのと同時に自分も進むと、食堂で働くおばちゃんに焼肉定食を注文する。隣で朝比奈も焼肉定食を注文した。 「今日お礼しに行くんだろ?」 「うん」  あれから悩みに悩んで、結局何にも思いつかずに同期の女子社員に趣味嗜好を聞いてお礼の品を決めることができた。仕事するより労力を使ったと思う。 「ねぇ、間中さん可愛かった?」 「……何だよ急に」 「好みだった?」  おばちゃんが焼肉定食をそれぞれのお盆に乗せると、陽太たちはお盆を持って空いている席に着いた。その間もずっと朝比奈は隣でニヤニヤしながら「どうなのさ」と聞いてくる。呆れた。お前は中学生かっつうの。 「いやー、俺的には間中さん超可愛いと思うんだよね。少し低めの声だけど、俺的にはそっちの方が可愛いと思う。橋本環奈的な」 「そこまでハスキーボイスじゃないだろ」 「で、どうなの? 可愛かった?」  朝比奈を無視して「頂きます」と言うと、焼肉定食を食べ始める。 「おい、無視するなよー」  朝比奈も焼肉を口に運ぶと、幸せそうに白米を口に放り込む。 「可愛かった」  陽太が小さな声で言うと、朝比奈が箸の動きを止め「まじか……」と漏らす。 「え、刈部が女子を可愛いって言うの珍しくない?」 「そうでもないと思うけど」 「いやいや、刈部と会ってから俺一度も刈部が可愛いってワードを発してるところ見たことないし」 「タイミングが悪いんだろ」 「ずーっと一緒にいるのに?」
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