―3653日前、月曜―

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―3653日前、月曜―

 山の奥の森の、さらに遠い果て。  森の木立がまばらになり、垣根が現れる。  門の向こうに見える、古い造りの屋敷。  その手前には、芝生を敷きつめた庭が広がる。  四歳のボクには、とても大きな庭園に思えた。  小高く盛り上がった芝生は、ちょっとした丘だ。  その頂上には、バラの浮き彫りが入ったテーブルと四つの椅子が並ぶ。  女のひとが、日傘をさして腰かけていた。  前からボクを待っていたように微笑み、手招きする。  ふわりとした白いシャツ。  たくさんのひだ……プリーツがある紺色のスカート。  白い歯がこぼれて、雲間から光が射してくるみたいに明るく感じた。  笑顔に吸い寄せられて、ボクは庭に足を踏み入れる。  奥にある植えこみに、黄色に白に紫、色とりどりの花が咲く。  レンガのかたわらに転がるじょうろ。  懸命に芝生を登って、そのひとの向かい側にちょこんと座る。  ことり。  硝子のグラスが目の前におかれる。  少し白く濁った何かの飲み物。  氷がからんと鳴り、ストローと一緒に転がった。 「冷たくておいしいよ」  そのひとは、もう一度笑顔を浮かべる。  勧められるまま、グラスに口を近づけた。  さわやかな香りが鼻をくすぐる。  そのまま、ぱくりとストローにかぶりついてちゅうっとすする。
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