再会

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再会

 もう二度と会うことはないだろうと思っていた。  青色の壁紙に赤色の線、イギリスの国旗のような色模様の派手な店を見て私は驚く。  また出会ってしまったと。  その店がどんな店なのか知っている。  店内にはキラキラと輝く美味しそうなパンたち並べられている……パン屋だ。  店に出会うという表現はおかしいかもしれないが、このパン屋は普通のパン屋ではない。  このパン屋は特別なパン屋、パンを得るには自分の思い出や悩み、夢や希望を交換しなければならないのだ。  この店でパンを食べて外に出ると店は煙のように消えてしまう。  ふと気づいたら空きスペースがそこにあるだけという神隠しに遭ったような不思議な体験をするのだ。 「入ろうか、入らないか」  私は中の様子をうかがって考える。  またパン屋に入ったらああ、この人前も来たじゃんと話しかけられるだろう。  前訪れたときは自分では抱えきれないほどの悩みを抱えていて、自分の心の内を明かしたのだ。  正直気持ちを表に出すのはとても恥ずかしいもの。  虚栄心、自尊心でいっぱいな自分が再び子供のように何もかもさらけ出せるのだろうかと不安になった私は中に入るのをやめようかと思った。 「あ、美味しそうな匂い」  匂いにはっと意識を取り戻してパン屋を見つめる。  この前会った店員が手を振っていた。  そういうことで私はパン屋に入ることにした。
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