初めての出会い

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初めての出会い

 何か美味しいものを食べたい。  いつもと同じ日常生活に少しだけスパイスを加えたい。  ふわふわとした想いを抱えながら歩いていた時のことだ。  大人になってから、なんとなく世間の流れに乗って就職したけれど果たして自分は幸せになったのかと考えたことがある。  それなりに喜びはあるし、楽しみもある。  ただ、何か物足りなさがあるのだ。    なんというか自分のやったことは本当は誰にでもできることなのではと。  地獄の就活時代を思い出して少し鬱になっていたかもしれない。  自己分析から自己PR、毎日探してはエントリーシートを書いて出しての繰り返し。  面接では必死にアピールをしてうまくいったりいかなかったりと過ごした。  その間、語っていることが自分ではないような気分がしたのだ。  なんとなく社会の歯車に合せるようにして書かれた志望動機や答え、何度も繰り返せば自分のものになるのだろう。  しかし、段々とそれは自分の言葉とかけ離れていった。    周りの期待に応えようと一生懸命仕事をするけれど、積もっていくのは楽しくないという感情。  自分がやりたかったのは本当にこれだったのかと疑問が浮かび上がる。  別にパワハラやセクハラをされているわけではない。  人間関係につまずいているわけでもない。  ただ、何か虚しさが込み上げるだけだった。 「何を贅沢な悩みなんだと言われそうだなあ」  街をぶらぶらと歩いていたが、交差点にたどり着く。  信号待ちをしながら大学時代に仲良くしていたあの子を思い出した。  あの子とは全くあってない。  卒業をする前に疎遠になってしまった。  その原因はあの子の就活がうまくいかなかったから。  社会の歯車に乗れなかったあの子は荒れてしまい、式に参加することなく別れてしまった。  あれからどうなったのか、共通の友人に訪ねてみたが行方知れずらしい。  友情があっけなく壊れてしまうことを知ってしまった。  正社員になれなかったあの子はどうしていったのかわからない。  親からは何度も就職できないことをグチグチ言われていて精神的に参っていたのだ。  最悪の場合があるかもしれないということで、同級生の間にあの子の話題は挙げられなくなった。
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