移動教室

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移動教室

 移動教室。 普段と違う席順。 君の隣だった。 君は優しく話しかけてくれる。 「話した事なかったよね?」 「何部なの?」 一生懸命質問に答え、君の事も聞く。 君があまりにも真っ直ぐに見つめるから、私は君と目を合わせられない。 すぐにそらしてしまう。 分からない問題があり、質問すると君は一緒に考えてくれて、時には教えてくれる。 「難しいね。こんなの分からないよ」 「この問題は分かるよ。ここが大事で...」  いつもの教室。 たまに君と話すようになる。  授業中。 君の横顔を見つけてしまう。  休み時間。 君の事を探してしまう。 今までそんな事なかったのに。 君の事を考えてしまう。 移動教室が楽しみになる。  廊下を歩いていると、君が隣のクラスの子と二人で話していた。 後々分かったけれど、君はその子と付き合っていた。 私にその噂が届いたのは随分と遅かったようだ。 その噂を話す友人に 「知らなかったの?誰でも知ってるよ」 と言われた。  君は一瞬でも私を好きになったりしなかっただろうか。 一瞬でも恋人の事を忘れたりしなかっただろうか。  もう移動教室は嫌だ。 悲しくなるから。 完
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