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あれから一週間立ち、新見の音は出ているから鳴らしていると言えるほどには成長した。 とは言え当分は一曲丸々演奏するのは難しいだろう。簡易アレンジのもので一ヶ月、今月中に外郭だけでも捉えられればいいほうだろうか。なんてことを考えていると新見が話しかけてきた。 「バンド名を考えた」 「唐突だな」 「FullCheer」 フルチアー。 「意味は」 「一つははいずれ僕たちのライブが歓声で満ちると言う意味を込めて」 よくもまあ恥ずかしがらず堂々とこういうことが言えるものだ。こっちの方が恥ずかしい。 「直訳かよ、で他にはどういう意味を隠したんだ」 「悪かったな、油性ペンさんほどのネームセンスがなくて」 「それいじりはいいよ、二つ目の意味を教えてくれ」 「いや言わない、あえて隠しとく」 怒らせてしまっただろうか、まあ別に意味なんていいか。 「おーけー、どうせ反論したところで名前は変わらないだろうしそれでいいよ」 「決まりだね」 これから人前に出て演奏することがあるのだろうか。新見のことだしないとは言い切れない覚悟はしておいた方がいいか。 「それから一つ聞きたいことがあるんだけど」 なんだろうと新見の方へ再び顔を向ける。 「作曲をお願いしたらやってくれる? 」 かなり難しい相談だ。ここで一つ首を縦に振るのも横に振るのも簡単だがどちらにしろロクな未来が待っていないような気がする。 「引き受けた場合はどうなる」 「お願い通りやってもらう、作詞は僕にやらして欲しい」 渋い顔をする。すると慌てた様子で声をかけてくる。 「ごめんごめん、マッキーを差し置いて一人で作詞なんて二人でやろう」 別に作詞がしたくて渋い顔をしていたわけではない。 「作曲をしないと言えばどうなる」 役割交代だろうか。それとも断念か。 「僕が両方やる」 オリジナルの曲は意地でも作りたいようだ。となると後々演奏することを考えれば自分で作ったメロディの方が楽だろうし、新見の作曲のセンスは信じられないし俺が作曲をした方がいいか。またいつか笑える日が来ると信じて引き受けるか。 「作曲はやろう、作詞は任せる」 「ありがとう、これで気兼ねなく作詞できる」 よほど嬉しかったのか、今まで見たことのないほどの笑顔を見せてくる。 「オリジナル曲もいいがこっちの練習が最優先だ」 そう言ってベースをコンッと叩く。 「そうだね、でも楽しみだな、オリジナルの曲をみんなの前で披露する、夢のようだね」 それからの新見の音は今までよりも調子がよく聞こえた。
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