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バンという激しい音がした。音のした方を見てみるとそこにいたはずの新見の姿がなくなっていた。 「おい、大丈夫か」 急いで駆け寄る。すると机に手をつき新見がひょろりと立ち上がった。 「ごめんごめん貧血持ちなのに興奮しちゃって」 顔を見るに大丈夫そうだ。 貧血と興奮には因果関係でもあるんだろうか。 「何かあったのか」 「ああ」 真面目な顔で返してくる。 「会場でライブをする方法が思いついた」 通常通り馬鹿なことを言ってくる。頭は大丈夫なようだ。 「最近ネットで大流行りのユニットだと嘘をついてステージを用意してもらうってのはどうだ」 何を言っているんだこいつは。 「何を言っているんだこいつはという顔で見るなよ、みんなが幸せでいられるなら嘘も使っていくべきだって、会場さえ沸かせられたら結果無名でも万々歳 でしょ」 沸かせられなかったらどうするんだとか、バレたらどうするんだとかは突っ込まない。反応する方が馬鹿らしい。 「最近は申請すればライブやらせくれるとこがあるよ、観客だってそれなりにいるって話だ」 って昔、兄貴から聞かせてもらったことがあるし本当だろう。 「東京ドーム? 武道館? 」 「アホか、そんな規模のとこなんて流行り続けた人たちしかライブやらせてもらえねえよ」 「冗談冗談、そんなところがあるんだね知らなかったよ」 ご満悦と言ったような顔でギター持ち直し音を鳴らした。少しずつではあるが確実に様になってきている。 「まあでもいつかは世界を巻き込むようなライブをしてみたいな、いかにも青春って感じだし」 「そんなレベルになってる頃には青春なんて終わってるだろ」 冗談か本気か分からない新見の言葉を茶化すように突っ込んだ。 「それだけ輝いてたらまだ青春は続いてるよ」
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