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「とりあえず帰りながらどういう方向性でいくか話し合わないか」 早く人の目から逃れたいし。 「わかった」 そう言うと鞄を取りに自分の机の方へと向かっていった。 「家はどっち方面なんだ」 「西側」 「同じ方向か」 都合がいいな。遠回りはせずに済みそうだ。 校門を抜け歩道を並んで歩く。 「2人でいいのかメンバーは」 「充分でしょ、音鳴らせるし」 「その理論でいくならソロでもよくないか」 「シンガーソングライターも考えはしたけど、技術的にも精神的にも不安だったからやめた」 よくそんなので人を誘おうと思ったな。 「楽器はどうする」 「ギターにする、バンドといえばでしょ」 なぜか得意げにしている。 「もう買ったのか」 「もち」 「すげー、行動力だな」 「まあね、やると決めたからには形からってやつ」 「音楽経験は」 「音楽の授業でリコーダーを、それからピアノで猫踏んじゃったくらいなら弾ける」 技術的に不安と言っていた時点で想定はしていたので驚きはしない。高校生でギター弾けるやつの方が少ないだろうし。 「まあ、おいおい練習していけばいいか」 こうして話していると意外と悪くないかもしれないと思っている自分がいることに驚いた。 「だんだん楽しみになってきたでしょ」 顔に出ていたのだろうか、顔を覗いて見透かしたようなことを言ってくる。 「そこまでじゃない」 まだ楽しみというほどではない。 「練習は学校でやる? 」 「そんな許可出ないだろ、うるさいし」 「吹部だって放課後やってるじゃん」 「あれは部活だからな、それに確かうち軽音部もあっただろ、多分頼んだらそこ入れって言われるぞ」 新見はシュンとした顔をした。 「場所は少し遠いかもしれないけどここから反対に楽器屋がある、そこにスタジオみたいなとこがあったはずだからそこでやろう」 俯き気味だった新見が顔を上げ、 「分かった、でも学校にも交渉はしてみる、それでオッケーなら学校でやろう」 と提案してきた。 そこまで学校にこだわらなくてもと思ったが、移動時間やスタジオ料金を考えると学校の方がいいのか。 「それでいい、交渉は任せる」 おう、と新見は親指を立てて見せた。 「じゃあまた明日な」
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