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変わり映えなく五限目までが終了し、担当の先生が教室を後にした時、携帯電話が震えるのを感じた。 内容を見てみると新見から『旧被服室使用可』というメッセージが入っていた。旧校舎取り壊しは夏休みとか言ってたからそれまではいいってことか。そのまま返事はせず携帯電話を閉まった。 六限目も終え、放課後がやってくる。 「初メッセージを既読無視されたのは初めてだよ」 不機嫌そうな顔で携帯の画面を見せつけてくる。 悪かったとその携帯を退けつつ話を切り出す。 「よく許可をもらえたな」 「意外とあっさりだったよ、周りに気を使うことと夏休みの取り壊しまでの使用って条件でね」 妥当だ。 「ああそれから、鍵の管理だけは怠らなって」 「旧校舎なのにまだ鍵がついてるのか」 「そうらしい」 「時間とかは」 「さあ、特に言われなかったけど、完全下校時刻さえ守ればいいでしょ」 七時までか、六限終わりが五時前だから二時間。まあ、充分といえば充分だな。 「ひとまず言ってみようよ」 「そうだな」 二年生教室のある二階から一度一階に降り、旧校舎に入り直してから再び、二階へと上がる。 「いや懐かしいね」 新見はうきうきで背中に背負ったものを揺らしながら歩いている。 「まあ、去年まで使ってたからな」 「マッキーは選択科目、家庭科にしてた? 」 「いや、書道」 「渋いな」 「楽だって聞いてたからな、新見は」 「僕は音楽」 なら、二人とも被服室に所縁はそうないか。 新見が被服室の鍵を開け、中に入る。大きな机が北と南に三つずつと黒板前に一つ置かれているだけでそれ以外は何もなかった。 「広いな」 電気のスイッチを探し、押してみる。 「まだ電気は着くみたいだな」 「だね」 アンプ繋げるのにコンセントがあった方がいいし、電気が通ってるのはありがたい。 「ちょっと鳴らしてみようかな」 新見はそう言うと背負っていたものを下ろし、中を開け取り出す。 「アコースティックかよ」 てっきりエレキギターだと思ってたから驚いた。まあ、どちらでも構わないけど。 「ん? ギターだよ」 どうやら彼自身もあまり気にはしていないらしい。
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