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「弾けるのか」 「音は出せる、家で練習しようと思って少し触ったからね、まあ怒られてすぐやめたんだけど」 アコギは調節難しいからな。 「まあちょっと聴いててよ」 そう言うと机に腰掛け、ギターを鳴らして見せた。 音を出せるという表現が的確であった。響きだとか、美しさといったものはなくピアノで鍵盤を叩いたのと同じ、音がただ出ていた。 「まあ、練習だな」 「だよね」 様にならない佇まいでギターを持ち直す。 「せっかくだし教えてよ、例えばCとか、Fとかってどこ抑えるの」 「コードの話か? 」 「うん、たぶん」 「悪いけど知らない、ベースならわからなくもないけどギターに関しては無知だから」 「え、じゃあ色々鳴らしてみるから確かめてよ」 「無理無理、そんな絶対音感じみたこと出来ない」 すごくショックを受けたような顔をしている。もしやこれは僅か一日で解散か。 「そこまで手取り足取りしてもらおうってのはわがままか、自分で調べて頑張るよ」 折れなかったか。 「今時はネットに情報いくらでも転がってて導入はしやすいだろうから、頑張れ」 うん、と返事をすると携帯で何かを調べ始めた。もう取り掛かるつもりだろうか。何にせよできることはないだろうし、俺は帰るか。 「どこ行くの」 扉を出ようとしたその時、呼び止められた。 「ベース持ってきてないし、帰るけど」 少し考えるそぶりを見せたのち、 「分かった、僕はもう少し練習してから帰るよ、じゃあね」 と手を振った。 「じゃあな」 そう言い、扉を閉めかけた時、ふと思い出した。 「布かなんか挟むと音抑えれるって聞いたことあるから、それなら家で練習しても怒られないかもよ」 そう告げ、扉を閉めた。 扉越しに「ありがとう」と言う声が聞こえた。
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