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入学式後は、それぞれ寮までの道を案内された。
この学院には地方から来る者が多いこともあって、創立当初から寮がある。
もっとも、今使われているのは30年前に造られたもので、古い方はもう使われていないらしいが。
「まったく、…"共同生活も魔道士には必要な事だ"なんて…あの腐れ学院長め。協調性を鍛えたいんだかなんだか知らないが、そんなものを学び直したいのであれば、幼稚園にでも戻って勝手にやってろ。」
皆が寮とはどんな場所だろう、あの子と同室になれるかな。など期待に胸を膨らませる中、ヴァーグは不機嫌だった。
それは、今年の入学者数は偶数なので、余る者は居ないと教師に言われたからだ。
出来れば一人部屋が良かった。
その方が何かと動きやすかったのに、と心の中で嘆いていたら、くいくい、と誰かに制服の袖を引かれた。
「ヴァーグ・フォンテーヌ。君と話がしたかった。」
王族特有の緑眼に、短くカットされた金髪の美男子は、どことなくキラキラと輝いて見える。
「魅了魔法…、いや、これはオーラと呼ぶべきか?」
アレク・ハーレイ。
その身に着けている物は自分達と全く同じ制服なのに、溢れ出る神々しさが抑えられていない、と周りは言う。
「うん!」
「はぁ。……いったい何の用だ。言っておくが、俺は相手が王族だろうが容赦しないぞ。」
「うん!」
「いや、…うん、ではなく、何の用だと聞いてるんだ。」
「うん!!」
何を聞いてもうん、としか答えない相手に付き合っていられない、そう思ったヴァーグは、袖口を掴んでいたアレクの手を振り払い、自身の寮部屋へと続く鍵を教師から奪い取って、ほとんど話も聞かずにその場を立ち去った。
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