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鬼の心臓
その日の任務は、少し規模が大きかった。
あるグループが御法度を幾つも破り、裏社会である事を良いことに好き勝手しているという問題が上がった。ヤのつく人達にはそれぞれ縄張りがあり、その間を勝手に使い、ましてや売り捌いたりもしているらしい。しかし売られた側も大きいグループなせいで、抗争が大きくなる事は防げない。
「だから僕達が出る。」
手っ取り早く問題のグループを殲滅して、相手方にもそれでケジメをつけて貰うという事で話は合致した。そう話す雅楽に、尊主隊の精鋭は静かに頷いた。
隊長が問題のグループの頭と対談を取り付けている。最中にサイバー隊が監視カメラとセンサーを無効化し、同時に切り込み隊が突入、戦力の拡散と減退が確認でき次第隠密部隊と恭介で取りに行くという作戦である。
「最近発足してから拡大が恐ろしいスピードだ。情報のない構成員もいるだろうし、僕的にはデータ不足だけど。」
五木は少し険しい表情で、端末を操作しながら言う。しかし雅楽は、いつもの星の瞳で背を反らした。
「しかし対面する機会を得たのも今だからこそだろう。相手も油断している。ここを叩くぞ。」
彼の目は、息が止まる。
吸い込まれそうなそれに、四ツ谷はゴクリと喉を鳴らした。彼の下に着いた理由を聞いた時、静かにそう言った恭介の言葉は、あながち間違っていないと思った。
彼が道を決めた時、舵を切る時、その目は先を見ていて貫くような強い力を持つ。当てられてしまう程のそれは、死を錯覚するような、心臓を握られるような気持ちにさせる。
いいとか悪いとか、そういう次元では無いのだ。彼の数倍強い意思がそれを生み出していて、自分達はきっと、それに心臓を突き動かされて頭を垂れる。
誰が最初に、彼を軍神と呼んだのだろう。しかしそう言いえるほどに、彼は人間離れしていた。
「さ、ごみ溜めらしく足掻こうか。」
にやりと笑う雅楽のチカチカ光って眩しいそれは、彼が燃やす魂の輝きなのだろうと、漠然と四ツ谷は思った。
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