世紀末就職活動奮戦記

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 <後半>   とりあえず、いったん就職・・・?今日から私は・・・(笑)  6月4日 朝からのはずが、前日に連絡が入って、遅番で出勤。 汚い食堂でメシ食って、挨拶。とにかく寒い。どこに行っても寒い。 6月やっちゅうのにクーラーガンガンに効いてる。 ここの連中みんな体感温度おかしいんとちゃうか。 Kと言う仕切り女に連れられて、カウンターに。頭茶パツの馬鹿そうなのが早番でいた。 後にわかるがこいつがどうやら「馬鹿のA」らしい。 「どうしたらいいですか?」と聞いたわしが馬鹿だった。 「じゃあ、入ってて。わかるやろ」って、おい。来た初日でいきなりポスに放りこんでほったらかしにするなっちゅうねん。 やりかたは同じでも、ポスははじめて触るMARS。 おまけにカード会員はおるし、二千円文鎮やし、次長は「間違えたら自腹やで」って脅すし。 キーっ、Kっ。おまえ、教えてやれって言われたんやったらちゃんと隣でサポートしやがれ! あっちぷらぷらこっちでタバコぷかぷか、なめとんのかっ。 しかも。 「これはこーしてこーやからなー」で、終わり。一回しか教えへんの。 隣でずーっと「ひまやわー」って値札作ってるだけやのに。ええかげんにせえ。 「Aってゆーのがほんとにもー馬鹿でしょっちゅう間違えてんねんけど、これやったらすぐ抜けるわ」って、あったりまえやんけ。 そんな19の馬鹿女と腐っても4年足掛けでパチンコ屋におる人間一緒にせんといてくれ。 店のつくりといい、やり方といい。どことなーく以前バイトしていたK店に似ている。 ちゃらんぽらんな上司がおらんだけましかもね。   6月5日 久々の早番でとっても身も心もだるい。 のに、帰ってきてから犬の散歩に行って家の前に戻ってくると、中肉中背デブ型のきたなーい真っ黒なぼさぼさのロングヘアをゴムで束ねてずん胴のトレーナーにジーンズ姿の変な女がこっちに向かってやってくる。 なんやねん、と身構えると、「**号室の方ですか?」って言ってくる。 「ちょっとお宅の犬、朝とか夜とか鳴き声がうるさいんですけど」だと。はー? 「ほかにもいっぱい飼ってるところもあるんで、あんまりきつくも言えないんですけど、他のところはきちんとなきやませてるし、もうちょっと気を使っていただけたらと思って」だと、ふっざけんなこのデブ! うるさいって苦情言われるほど何十分もぎゃんぎゃん鳴かした覚えなどないわっ! 何を勘違いしているのか、吐き気がするほどの気色悪いブス女は、いっちょ前に説教垂れ流して親切ぶってごちゃごちゃ言うので、へーへーと顔背けて聞き流して、「どーもすみません、今後気をつけますー」ととりあえず言っておく。 大体「近所のものですけど」なんてなあ、おまえなんか見たこともないんじゃ!どこの近所に住んでんのかもしらんやつに、何でいちいち面と向かって苦情言われなならんのじゃ! ああむかつく。こっちだって遅番で朝ゆっくり寝たいときに、バイクのエンジンかけっぱなしでうるさいボケだの、チャリンコ置き場でワーワーぎゃーぎゃーゆーとるガキだの、じゅーぶん迷惑項むっとんじゃ、あほんだら。 人様の神経逆撫でるほど鳴かしとらへんわ、どこのどいつと勘違いしとんじゃ! 向かいの棟にきゃんきゃんうるさいポメラニアンおるやろ! そーいや、かってに自治会班長にならされてたよ。いいかげんにせえ。何が自治会じゃ。大きなお世話さまじゃーっ!(ぶちギレ中)   6月8日 月曜日から腹が痛くてどうしようもなく、火曜にT医院に行って薬をもらったが回復せず、結局いきなり休む羽目に。 「神経性なものでなければ、一番疑わしいのは盲腸ですねえ」って、先生おどさんといてください。 「血液検査したらすぐわかりますから」と、血を抜かれる。 「もし盲腸だったらどうなるんですか?」と恐る恐る聞いてみる。 「そらあ手術やね」って、そんなあっさり。 しかも、待合室で小学校時代のクラスメートのSに会う。お互い顔を見ながら似てるなーと思ったらしく、名前を呼ばれて確信。 一言二言しゃべってそのまま帰る。別に用もないし。そんなに仲良くもないし。ってか、嫌いやし!! おまえ中学んとき、シカトしてたくせにしょーがなく付き合いで渡したサイン帳に、しれっと「いつまでも友達」とかふざけたこと書きやがったよな!?やられた側は一生忘れへんからな!! 一大決心をして店に連絡。腹が痛いじゃ信憑性がないので、腹を下していることにする。 もーストレスぜっこーちょーの出血腹痛大サービスって感じ。誰か助けてくれ。痛いのだ。ううう。   6月10日 とりあえず腹痛は収まったので、無事出勤。 Kに一言謝ると、「忙しかったからなー、無理してきててもさばききられへんかったかもしれんかった」といわれる。 立ってるだけでも脂汗もんやったからなあ。無理していかんでよかった。 「大体わかるー?」と、朝からやっぱりほったらかしにされる。 まだ2回目の早番やのにわかるわけないやろーが!3日4日で全部できたら、1ヶ月おったらプロやないか! 内心「ざけんなーっ!」と叫ぶが、Kは手伝ってくれないので、仕方なくマニュアルを見ながら苦悩する。 新人やからって四六始終つきっきりってのも嫌だけどさー、入った初日からお任せコースも大概やっちゅーねん。 ポカしたらフォローしてくれるやつおらんやんけ。 ここに来る前のS店では見事になーんもさせてくれんかったが、ここではなーんでもかんでも下のもん任せで、やることが多い。 とにかく多い。マイク放送が多い。 会員受付やら有線やら、コンピュータのデータ打ち込みやら、多すぎる。何でこれで一人なんじゃ。 終わる前の掃除ではトイレ掃除当番。五分ほど余ったからホールの女の子捕まえて「時間あまったらどうするの?」と聞いたら、「その辺でボーっとしといて」だと。 ほんまにそれでいいのか不安なのでもう一人に聞いたら、やっぱり「その辺でボーっとしといて」だった。 5時までなのになぜか上に上がるのは55分だし、残り5分は食堂で休憩だし、それでいいのか、A店よ。   6月17日 腹痛で休んで以来、どうにかこうにか嫌々ながらも店に通っている。 二ヶ月のブランクも手伝って、体はだるいわ気持ちはたるんでるわ、周りの連中はちゃらんぽらんだわ、結構大概にしてくれって感じー。 ストレス絶好調プラス通勤時間が長くて暇なおかげで、古本屋で買ったままずーっと手付かずだった小説Kシリーズについに着手。 が。なかなかスピード感があって、ばったばったと人が死ぬあたり気分爽快。 多分今のわしの心境を見事に実行してくれているようだ。イラストもいいし。 はっと気がつけばドツボにはまっていた。 家にあったのが6冊。が、続刊が出てるを知ってたおかげで、だだだっと二日で読みまくって、次―っ、と病気が発症する。 古本屋と普通の本屋を二日間はしごしまくるが、なぜにっ!後半七冊だけが見つかって、ちょうど続きにあたる真ん中二冊が抜けている。うがーっ! 普通の本屋で小説七冊も纏め買いしたの、何年ぶりかいね。本棚ごそっと穴あいとったよ。 ああ。しかも、結局続きを買おうと仕事前に本屋へ寄るが、やっぱりなし。 しかも、S駅の方では目当ての本屋は閉まってるし。ほかの二軒は胡散臭いし。 結局途中の番外編を読んでごまかして、早番の帰り、地元の駅前で二冊ともゲット。幸せ満面で岐路につく。 が、店の方では苦渋満面の日々が続いていた。 Kが相変わらずお局状態で好き勝手してる割には、勝手に苦悩していてうるさい。 Mリーダーとよくこそこそ話しているが、いったいおまえら何なんだ。できてんのか? Kに至っては、朝っぱらから本人まったく気付かずに、襟からばっちりキスマークを披露しながらうろうろしてる。 昼になってO君に指摘されて真っ赤になっとったが、何をいまさら。 挙句の果てに、キーキーヒス起こして「もー疲れたから隠居するわ。君にはこの重荷をプレゼントするから」だと。いらねーよそんなもん。 「そんなん隠居されたら困りますよ。重荷なんかまだまだ背負えないんですからー」とごまかすと、何を考えとんのか馬鹿Kは「なに言ってんの、君が一番弟子やないか」って。 は? 誰がおまえの弟子になんかなったっちゅーんじゃ!年甲斐もなく色ボケしやがって、頭わいてんのかKっ! しかも。しーかーも。やっぱりよくよく接してみるに、こいつの言動は大学時代に大概な迷惑を被った某Aによく似ているのだ。 しゃべりかたっつーか、一人で苦悩してる割にはおめー仕事してねーよってゆーとことか、ぐだぐだ言ってねーで黙って動け、とか。 でも、どうやらはじめっから一人で放っておけるしポカしてないぶん、わしはKには気に入られているほうらしい。ああ迷惑だ。ほんまに。 しかも来週あたりからホールに回されるかもしれん。だるいっちゅーねん。 いまいち店の雰囲気にもなじめへんし、食堂のババアはうるさいし脂っこいし、ホール面倒だし、他にええ仕事合ったらとっとと転職したいわ。 来月から正式に正社員らしいし。ああ。   6月20日 前々から交代のときに入っていた本人が確認するだけなのが嫌やなーと思っていたら。 バタバタと客が並んだので、ふと途中で確認を入れると、文鎮の数があわねえ。どういうこった! 何度数えても大が5本足りない。おいおいおい、一万円だよ。どうすんだよ。こんなことで自腹切ってたら、日給なんてあっという間にパアだよ。 だがしかし。いつどこでどうやって間違えたかなど確証などない。 果たして本当に自分で間違えたのか、早番で入っていた新入り一週間のTが間違えたままトンずらしたのかも定かではない。 とってもイヤーンな気分でしばし悩む。 休憩のときにごたごたすんのも嫌だし、Kが暇そうに横で茶あ飲んでるから、今言っといた方がいいかー、と諦める。 「Kさーん、文鎮間違えたみたいですー」としかたないので正直に言う。 最初っからわし悪くねーもんと開き直るほどわしもバカヤロウではない。ああ。 「次長に報告して足りない分もらってきてください」といわれて、数えなおすと、おおお?なぜだか一万五百円足りない。 もしかして、後からさらに五百円間違えたのだろうか。気がそれててさらに上乗せか?じょーだんじゃねーぞー。 しぶしぶダルーい足取りで事務所へ向かう。次長に謝るが、まじでいつ間違えたかなんか知らんっちゅーねん。 大体いっそがしい日曜日にカウンター一人なんか少ないんじゃ。 「残念やなあ、後一日でパーフェクトやったのに」って、こっちだってわざとやってんじゃねーや!もしかしたらTかもしんねーだろ! 前日にプラス一万円出したらしいからな。 しかも、とってもうれしくないことに、休み明けからホール確定。 各コース二日も三日も滞在しとったら、一周したころにはカウンターの作業なんざ、キレーさっぱり忘れてそうだ。ああ嫌だ。 かといってすぐに辞めるわけにもいかないので、自分を追い込むためにも腹をくくって翌日に何ヶ月ぶりかに髪をブリーチする。 マンガ読んでたら時間たちすぎて脳天の髪の色思いっきり薄くなってしまった。 ハニーブラウンだが、やっぱりわしはオレンジブリーチが一番好きだなあ。仕事が落ち着いたらまたしよう。はああ。   6月23日 とってもイヤーンな気分が前の晩から続く。 嫌でないなわけないやん、ホールなんかゆーたら肉体労働やん。 数日前に見た駅前のWのアルバイト募集が脳裏にちらつく。 自給800円でもあんだけ何にもすることなくってぼへーっとしとったら楽でいいよなあ。 心が揺れるどころか今すぐにでも辞めてそっち行きたいっちゅーねん。 しかも、アシストしてくれるのはぶっさいくなO君だ。ああ嫌だ。 まだN君とかK君とかW君ならまだしも、何で一番ぶっさいくな奴やねん。 とりあえず降りてすぐにリモコンの使い方を聞く。 店のやり方を一通り聞くが、何でホール初日に新台入ったばっかりのコースに入れるのか聞きたいんっすけどね、リーダー? 客付8割。 しかも、立ち見が多い。おのれら全員まとめてラリアート食らわしたろか、邪魔なんじゃ、ボケ! 箱が持ちにくくてキレそうになる。何でこんなもんまでK店といっしょやねん。あっこはまだ客付3割ぐらいやから許せても、指痛いやんけ。 だがしかし、S店とは違って、「おめでとー」もなんもいわんで言いから、その辺はまし。 箱換えるんも勝手にもってって勝手にレシート渡すだけ。まあどこまで行ってもいいかげんな店やねえ。 どういう状態がラッキーなのかがわからなくて初めに一回ランプを間違える。 が、仕組みがどうこうよりもランプのつき方がわかってなかったんだからしょうがあるまい。 次から隣の親父がからかってきてうっとおしい。とっとと帰りやがれ。 5年ぶりにしてはまあまあの動きだとは思うが、いかんせん最初っからやる気などまったくないので、どうものんびり動いているように見えるらしい。 O君に「もしかしてのんびり屋さん?」と聞かれたときには、「いーや、本来はめっちゃ気ぃ短いで」といいながら、ほんまは超がつくほど合理的やというのは黙っておいた。 大体こんな店で長居する気もないのにフルパワーでなんかやってられるかっての。年やねんから体痛いちゅうに。 二時間ほどで体中びしばし悲鳴上げてて苦戦する。 まじで途中から腰が痛くなり、座骨神経がぴりぴりと痛みが走る。やばいなーと思いつつ、うまくいけばやめる理由になるかも、と考える。 閉店作業はN君が教えてくれたが、何を教わっても誰に聞いても、何をやっても、どこまでも果てしなくいいかげんな店であることが判明。 マニュアルがないにもほどがある。 終わった後に着替えて事務所へ。歯切れが悪いなあと己を笑いながらも、次長に話を切り出す。 まじで一ヶ月もホールできんのは明白である。 ごちゃごちゃ言われたらやめたろうと考えていたのに、返ってきた返事は「しばらくカウンターでやってみろ」だった。 別にやめてもよかったんだけどねえ。 ホールで動くぐらいやったら何もS駅くんだりまで通勤せんでも地元でもいきゃあ暇なんだし。 カウンターっていっても一人でするには忙しいしさ。いいことないねえ、南極大作戦でもしてんのかって思うほど店ん中はブリザードだしさ。 次長も「冷え性が痛いんか?」って言ってんなら、もうちょっと温度上げろよ。足浮腫んでんのは毎日なんだからさ。 とりあえず辞めるのは保留にされてしまったが、心の中では地元のT店とゲーセンのWがくるくると走馬灯のように回っていた。 「ゆっくり休め」といわれたが、翌日は休みでなかったら休んだくらいからだが、筋肉痛で起きたら午後二時だった。 体痛いよー。年だねえ、ふう。   6月25日 何事もなかったかのように、カウンターに戻る。 が、ホールデビューのおかげで、足がパンパンでしゃがめない。 ちょっと物を拾うにも、ハウっとのたうつほど筋肉痛の嵐である。 しめになって、プリンターに用紙が1センチほど詰め込まれているのが判明。 たくさん入れたら紙詰まりを起こすと何度言ってもわからないおばかもののAの差し金らしい。 そんな手には乗らないぜ、と、先に用紙を減らしてからプリンターをセット。タバコを数えて帰ってくると、それでも用紙を巻き込んでぐちゃぐちゃになっていやがった。 なんでこんな古くてのろいねんっ! むかつきながら、巻き込んだ紙を取り除いて、急いで再セット。やり直しでダブるので、出てきた分のプリントはシュレッダーにかける。 計算をしていて、足元に目をやる。 お、止まってるやーん、と数えると、いちまーい、にまーい、さんまーい…一枚足りなーい。 用紙が一枚足りなくて、また止まってやがる! 再びダブるプリントをシュレッダーに。用紙を数えてセットするが、エラーが出て動かない。 しかも、今日に限ってMリーダーではなくて、Yリーダー。顔はいいけど、頭はパーの典型君。 仕方ないのでYリーダーに泣きつくが、わからずにしばし考える。他の女の子も来るが、やっぱりわからずしばし考える。 時計を見ると10:55ではないか。 後5分でできるのか?できるわきゃねーだろ、って感じ。ああ。 しかも、おばかものAの弟子であるT馬鹿二号がタバコの出庫表に記入していない。Yリーダーにおねだりして電卓をたたいて計算してもらう。 プリンターはようやくエラー解除のボタンを発見。だがしかし、終わったのは11:10だった。ああ10分もタダ働きだよ、バカヤロウ。 ファイルを持って事務所へ上がると、次長が手招きしている。 なんだろう、嫌だなあ。傍に行きたくなーい、と思いながらも、手招きされて机の前まで行く。 「この間の話の続きやけどな。カウンターやったらいけるんやろ?」 うげ、そうは言ってないんですけども。 「スロットなら重いものもないし、今度からはカウンターとスロットでがんばってくれ」だそうで。なぜだかにこやかに微笑まれるし。 別に、そこまでしてもらわなくてもいいんですけども。辞めたいのは事実だし。 仕方ないので「無理言いましてすいません」と頭を下げる。 「がんばります」といいながらも、辞めそこなったことでの後悔は積もり積もって山になる。 続けるのか?自分に問い掛けてみるが、「嫌だ」といっている声しか聞こえない。 自分でも不思議なくらい嫌になる。この店ってなんでこんなに肌に合わないんだろう。ふう。   6月27日 積もり積もった「辞めたい」という願望が、休火山から活火山へと変わる。 だって、何しててもいいかげんだし、つまんないし、単作業だし、客はやっぱり馬鹿ばっかりだし、やっぱりKは自分かって好き勝手してるばっかだし、もうイヤーって感じ。 なにも考えないでおこうと思えば思うほど、自分の表情がなくなっていくのがわかる。 多分、「いらっしゃいませー」とか言いながら、顔引きつってんだろうなあ。 何日か前にやっぱり客に「態度がでかい」だの「話し方が気に食わん」だのいちゃもんつけられたことを思い出して、脳神経がキレそうになる。 大体パチンコ屋の客って何でこうも勘違いしてるんだろうねえ。 無理やり連れこんでさあ金使えって脅してるんじゃないんだから、勝っただの負けただの、いちいちうるさいんだよ、まったく。 てめーらが負けようが借金しようがのたれ死のうが、わしには何も関係ないっちゅうねん。とっととくたばりやがれ、あほんだら。 家に帰る道すがら、いやーな気分が体内に蓄積されていく。 家に帰って、さらに増えて、寝ようと思っても、ストレス絶好調でイライラ全開バリバリ。 神経しゃきーんと冴えてしもうて眠気なぞ宇宙の彼方である。翌日7時前起床だってのに。 寝られないまま4時が過ぎ、いいかげん目を開いていてもしょうがないので、無理やり目を閉じる。そして気がつけば、目覚ましが鳴っていた。 2時間ぐらいしか寝てないんじゃないだろうか。ああ体だるい。 朝一番から、仕事中、延々と頭の中でなんて言おうかシミュレーションしていた。もう気持ちは辞めるほうで決まっていた。 前の日に、毎月月初めは社員ミーティングがあって、休みだろうが遅番だろうが朝の9時にいったん出勤しなければならない、なんてKに聞いたから、余計に嫌になってたのかもしれない。だって、その日遅番だし。 辞めるなら、6月いっぱい。って言っても、後三日。ああ、胃が痛い、と思っていたら、昼飯食ったら腹が下った。 ここの飯はいったい何を入れているんだろうか。 Kさえも不思議がるほど、時には下剤の役目もこなすらしい。しかしうどんだぞ?今日の昼飯。 ひたすらうんぬんうなり続けて、腹も痛いままだし、足冷えて痛いし、ヘッドインカムで頭痛いし、寝不足で体だるいし、もうコンディションは最悪の一言。 腹を決めて、終わった後に事務所へ向かう。次長に「やっぱり体がついてきません」と話を切り出した。 したら、「冬服を着るとかで改善はできないのか」って、おいおいおい。 「辞めるしかないんか」みたいに言われて、もしかして、わしは結構次長には気に入られていたんだろうか。 「部長にも君のこと聞かれて、大丈夫やって報告したんやけどな。残念やな、即戦力やから期待しとったんやけど」って、まあ、そりゃあ初日から放って置けるような人材はありがたいよなあ、教える手間省けるし。 とにかく、引き下がるわけには行かないので、ひたすら「すいません」と粘る。「ま、しゃあないな」といわれて、ほっとしたら。「えらい顔があかるなったな」って、突っ込まんでくれ、どきどき。 制服をクリーニングして給料を取りに来たら言いといわれて、やっぱり辞めるときゃあ円満退職よねえ、と一人ごちる。 ぶっちすんのは簡単やけど、後味悪いもんなあ。もうそんな年でもないし。 さあ、明日からまた求職活動だ。もうパチンコ屋は足洗うでーって、やくざの世界やないねんから。ふひひひひ。   6月29日 S鑑定事務所に出向く。 雨降ってんのにわざわざバイクで行って、事務所で20分も待たされて、行ってみりゃあ自尊心ばっかエベレストになってとっても勘違いしてる高ビーな親父が面接官だった。 履歴書見ながら今まで定職についてないのがどうとか、アルバイトばっかだからどうとか、この仕事はそんな甘っちょろいもんじゃないんだとか、ああそうですか、って感じ。 だからなに?いらないんだったら、いちいち面接に呼ぶんじゃねーよ、電話で用件だけ言いやがれ、あほんだら。 しばらく見ないと思ったら、やっぱりまだいたんだねえ。サービス業を馬鹿ちょん扱いするホワイトカラーのああ勘違い親父。 君らねえ、たまの休みにも絶対パチンコ屋にはくんなよ、ほんまに。 世の中半分以上がサービス業ってわかってんのかねえ。そんなにおえらい職種なんだったら、五流大学は不可、とか書きゃあいいやん。 散々こけにされたんでほとんど耳を素通りさせながら、履歴書返してもらおうかなあ、でも電話番号書き換えてないしなあ、なんて考える。 面倒だったんで「何かないですか」って言われて「なにもありません」と答えて、終わる。 履歴書ふんだくって帰ってもよかったんだが、こんな馬鹿親父にあえて相手するのもばかげているので、こちらが大人の態度で終わっておく。 「ありがとうございました」と、お茶は出してくれたので事務の人に声をかけて終了。 物損があったら全国各地飛び回るそうで、二日間降り続いた長雨で全国大災害中だった折、まあがんばって自尊心の山を築いてくれ。 ついでに土砂崩れにでもあって生き埋めになってくれるもまた一興。とっととくたばりやがれクソジジイ。   6月30日 待ちに待った(?)A店の最終日。 Kに「聞いたでー、やめるんやってー?」と恨みがましい攻撃を受けながら、気分はハレルヤ。 とりあえず、つつがなく仕事はスムーズにこなし、最後だからとバナナチョコ一個とベルハウスのライターを二個パクる。 一ヶ月も足らんかったのに、リーダーに「何か一言」といわれて、なーんにも考えていなかったので焦る。 「お世話になりました」とは言ったものの、次長にも太鼓判押された即戦力だった自覚はあるから、大して世話にはなったつもりはない。まあ、途中で一万円マイナスは出したけどもさ。 Kに散々「またパチンコ屋で会おう」と茶化されたが、たとえパチンコ屋に行ったとしても、あんたに報告する義理はないっちゅうねん。 事務所へ行って次長に「短い間でしたけどありがとうございました」と御礼を言って、「がんばりや」と返事をもらう。むー、次長には気に入られていたのだろうか。 ロッカーを片付けて、意気揚々と引き上げる。 帰りに梅田まで出て乗り換えたとき、目の前の座席に男が座る。その顔に、見覚えが…。 どう見ても、このカマキリ顔はHではないか。一瞬目が合うが、そらして本で顔を隠す。 うっかりしゃべりかけられたら、家まで電話がかかってくるのが目に見えている。 高校三年のとき、友人だった(過去形)Kのことでほぼ毎日かかってきとったからなあ。 「相手してほしけりゃ自分で電話せえ、ボケ」とけちょんけちょんにこきおろしてんのに、「君と僕の中じゃないかー」などと薄ら寒いことを抜かしとった馬鹿もんだったし。 しかし、人が店辞めてきた日におもっきしサラリーマンやってますって服装の奴とは会いたくないなあ。 ああ、わしも事務職したいっちゅうねん。 続きを読む時間がないと嫌なので、読みきりの小説を持ってきて読んでいたのだが、面白くない。近未来SFなんだが、なんかありきたり。 そんなん3年くらい前のわしも考えとったネタやっちゅうに。 あんまりにも面白くないのでぼへーっと流して読んでいたら、途中で意識が遠ざかっていき、がくんと首がこけた。 睡魔に襲われたらしいが、本読んでて意識飛んだの、初めてだよ。マジで。所詮K文庫の新人一作目じゃあねえ。  
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