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「あとは、突入のタイミング、だな……。」
虎太郎が、ラッキーマートの窓から銀行の様子を見る。
「あの、バリケードを撤去した正面玄関からの突入か?」
「いいえ、あの入口からの突入はやめたほうが良い。」
虎太郎の言葉に、あさみは首を振る。
「何で?あそこがいちばん突入しやすそうじゃないか。」
「……あれだけ解放された場所であれば、大勢の人質を逃がすのに最適。そこに突入班を入れては、混乱して人質の身も危険よ。他の場所から突入する。」
「でも……どうやって?」
「そこなのよね……。」
虎太郎とあさみが考えこむ。そこに……。
「最上階、ちょうどラッキーマート側の窓が一か所、突入できる様子です。なぜかバリケードもありません!!」
志乃が無線で銀行内の様子を告げる。
「なんで最上階……?」
「きっと、バリケードを張る工作員が少なかったのよ。だからいちばん突入の可能性の少ない最上階を捨てた……ってところかしら?」
「屋上からの突入だってあるだろ?」
「建物を良く見なさいよ。最上階って、6階よ?そこから突入すれば物音を感知してから逃げるまでの時間がある。SITだって、そこまで馬鹿な突入の仕方はしないわよ。人質のことを考えるなら、尚更ね。」
「なるほど……。」
特殊部隊で培われた知識と経験。
あさみは今どこがいちばん突入に適しているかを探っていた。
「でも……そこしかなさそうね。」
すぐに突入できる場所は2つ。
最上階の窓か、正面玄関。
「おじさん、煙幕とかすぐに作れる?」
「あ?俺か?」
「えぇ。あなた、爆発物のエキスパートなんでしょ?」
「おう……解除専門だけどな?」
「解除が出来れば、その逆も出来るでしょ。煙幕をひとつ作って欲しいの。小さめでいい。出来るだけ簡単なものを。あと、アンタ、カーテンを繋げて、出来るだけ丈夫な綱を作って欲しい。長さは……そうね、3メートルもあれば充分かしら?」
不意に、あさみが辰川と虎太郎に頼みごとをする。
「あさみ、どうするつもり?」
その会話を聞いていた司が、あさみに問う。
「なんか、このままだと犯人の思うつぼだわ。私が先行して突破口を作る。表にはSITの班長さんも待機してるんでしょ?私が合図を出したら一気に突入してもらおう。そうすればあとは、安全に人質を救出するだけだわ。」
「そんな……危険です!!」
あさみの提案に、志乃が難色を示す。
「大丈夫。日本の立てこもり事件を見てきたけど、どれも海外ほど過激じゃないわ。どの国よりも犯人がわが身可愛さに行動するのが日本。きっと海外よりも手口はおとなしいはず。そこに付け入る隙はあるはずよ。」
あさみは、自信ありげに無線で話す。
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