第0話:警視庁特務課

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「おら、観念しろや!!」 犯人と虎太郎の距離は、もう数メートル。 しかし、犯人も諦めない。 「観念してたまるか!こちとら人生かかってんだよ!!」 「バァカ!俺たちに追われてる時点で人生おしまいなんだよ!!」 「見逃せ!!」 「アホか!!」 もはや手の届く距離。 それでも諦めない犯人。 「こうなったら、1対1(タイマン)だ!それならまだ望みはある!」 「あ?舐めんなよコラァ!」 虎太郎と犯人の罵り合い。 「はぁ……なんか警察官って感じじゃないですよね、虎さん……。」 「志乃ちゃん、そんな分かりきったことで落ち込まないでさ……。あ、ほら、もうすぐ北条さんが到着するよ!」 悠真の指示した道順通りに走った北条が、ようやく犯人の前方に立った。 「タイマンじゃなかったら、どうなるかなぁ……はぁはぁ、ふぅぅ……。」 しかし、もう息も絶え絶えである。 「そんなフラフラなオッサンが来たところで、大して怖くねぇよ!!」 「……うんうん、ごもっとも。」 「……悠真くん!」 司令部では志乃と悠真が漫才をしているかのようだ。 しかし、そんな中でも司令官の司は冷静に指示を出す。 「ここまでの逃走劇で、犯人も気持ちが昂っているわ。何をするか分からないから、気を引き締めてかかりなさい。」 一瞬で場を引き締める司令官・司。 彼女がいるからこそ、この選りすぐりのメンバーたちがまとまっていると言っても過言ではない。 「……じゃぁさ、昇った血の気を下げちゃえばいいんでしょ?司ちゃん……。」 そんな時だった。 ようやく息の整った北条が、不敵な笑みを浮かべながら司に言う。 「……えぇ。任せます。」 司はその『方法』を聞くこともなく北条にそう答えた。 その司の無線を耳にした北条は、ジャケットの内ポケットに手を入れ、虎太郎に言う。 「ねぇ虎ぁ、このホシ抵抗が過ぎるからさぁ……いっそ、殺しちゃわない?」 「……え?」 北条の言葉に、逃げていた犯人が足を止める。 そしてその視線は、北条のジャケットの内ポケットに向けられる。 「オッサン……まさか……。」 「そ。そのまさかだよ。刑事が犯人を追うんだから、しかもその犯人が何をするか分からないと来ちゃぁ、刑事は『もしも』のための装備をしなければならない。それが『何か』、君は分かるよねぇ?」 北条は内ポケットの中にあるものを、カチカチと鳴らしながら、犯人に近づいた。 「そんなことしていいと思ってるのか?」 犯人の声が震えている。 しかし、北条は笑みを浮かべたまま、言った。 「……良いんじゃない?ここには僕たちのほかに誰もいないんだし。もう正当防衛ってことで。」 北条は、そう言うと少しずつ内ポケットのものを引き抜いていく……。
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