第8話:東京の最も長い1日

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こうして、長かった都庁ジャック事件は幕を閉じようとしていた。 「大山さん、あなたの気持ちはよくわかる。悔しかったでしょう。さぞかし無念でしょう。でもね……あなたのしたことは決して許されることじゃぁないよ。復讐っていうのはね、達成したところで誰も喜ばない。悲しみと後悔しか生まないんだ。それを……忘れないでね。」 2日後、都庁ジャックの人質であった青年3人が起こした事件の被害者の父・大山の取り調べが北条によって行われた。 大山は、現行犯で逮捕されたため、黙秘も否認もしなかった。 被害に遭った青年の傷も浅く、本人も深く反省しているので、罪は軽いだろう。 「はい……馬鹿なことをしました。確かに、復讐をすることでみさきが喜んでくれるとは、思えない……。」 「うん。」 「でも……どうしてもあの時のみさきの笑顔が忘れられないんです。お父さん、今日はお腹、空かせておいてねって……笑って家を出ていった、あの時の笑顔が……忘れられないんです。」 「忘れなくて、いいと思うよ。あなたにはそんな優しい、笑顔の素敵な娘がいた。それを忘れちゃ……みさきさんが可哀想だ。でもね大山さん、悲しいこばかり覚えていてもだめだ。みさきさんのためにも……楽しかったこと、嬉しかったこと、そして生まれてきた時のことを決して忘れず、胸にしまっておくんだよ……。」 「はい……はい……!」 北条の取り調べは、取り調べというよりも北条と大山の会話に終始した。 罪を認めている人間に、しかも被害者に娘を殺された父親に、これ以上問い詰める必要はないと北条は判断したのだ。 「じゃぁね。少し経って出てきたら……思い出を大切に生きるんだよ。」 「はい。ありがとうございました。本当に……。」 留置所に向かう、大山の表情は晴れやかであった。 「お疲れさまでした。」 取調室の外で待っていたのは、司だった。 「うん……なんともやるせないね、今回の事件は。犯人も死亡、人質が別の事件の犯人で、日々を真面目に生きてきた被害者の父親が逮捕される……。悔しいけど、誰も救うことが出来なかった。」 「えぇ……。でも、甚大な被害に関しては防ぐことが出来た。それは事実です。」 「……そうだね。」 特務課司令室までの、短い道のりを、ゆっくりと歩く北条と司。 そんな二人を、司令室入り口で待つ人物がひとり。 「北条さん、司令!ヘリの中にいた男の顔が映ったよ!」 画像の解析を進めていた、悠真だった。 「本当かい!?」 「すぐにみんなを集めましょう!」 北条と司は、司令室へと急いだ。
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