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司の呼び掛けで、全員が集まった特務課司令室。
「飛び去るヘリの動線上にあるカメラの映像・画像を手当たり次第に集めて解析したよ。その結果、鮮明じゃないけど、狙撃手と一緒にヘリに乗っている男の映像がゲット出来たよ。」
悠真が自慢げにここまでの経緯をメンバーに伝える。
「それで、画像は?」
「うん、いくつかあるけど、些細でも手がかりが見つかるかもしれないから、全部出すね。」
出来るだけ多くの手がかりが欲しい、と悠真が収集した画像・映像の全てを司令室のモニターに映し出す。
「これはまた、よくこれだけ集めたねぇ……。」
「すごい……。」
モニター一面に並べられる映像に、メンバー達が感嘆の声をあげる。
それぞれ映し出されたものを注視し、少しでも手がかりになりそうなものを探していく。
「……嘘……。」
そんな中だった。
司が真っ青な顔で、モニターの一部を凝視していた。
「……司ちゃん?」
その様子に真っ先に気付いた北条が、司の隣に立つ。
「何か、見つかった?」
北条が心配そうに司に訊ねる。
極力、メンバー達の視線を集めないよう、小声で。
「北条さん……。」
司は、一度だけ北条の顔をみると、小さな声で答える。
「あの、一番左上の映像に……。」
「一番左上……あれかな?」
映像は、最後まで流れるとリピートされて再び最初から流れるように設定されている。
北条は、司が言っていた『一番左上の画像』のみを注視した。
「…………あ。」
そして、北条もその画像の異変に気付いた。
「……どうして、『彼』が……。」
「うん、彼は『あの時』亡くなったはず……。」
ふたりとも、ヘリに乗っていた男の存在が信じられない様子であった。
「ん?どうした司令。北条さんも、なにふたりでこの世の終わりみたいな顔してんだよ。」
ふたりの様子に気付いたのは、虎太郎だった。
凍りついたように動かない司。
しかし、北条は苦笑いを浮かべながら答える。
「まさか、ここでも『8年前の事件』が絡んでくるとはね……。恐らくだけど、狙撃手と一緒にヘリに乗っていた人物は……8年前の事件で亡くなったとされる人のひとりだよ。」
メンバー達の視線が、北条に集まる。
「正確には、香川くんのお母さんの事件と同時刻に起こった事件。ふたつの事件は別々だけど、奇しくも関係してしまったんだよ。」
「言っている意味が、分からねぇよ……。」
当事者以外まったく把握できない、事件の概要。
「必要なことだから、これから話すよ。当時の……8年前のことを……。いいね、司ちゃん?」
北条が決意をすると、司は小さく頷く。
「時は、8年前のことだよ……。」
こうして、北条の昔語りが始まるのであった……。
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