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「へぇ、彼女さんも同じ刑事なんだ~。」
「えぇ。四課で今は働いてます。」
「四課で!?彼女さんがマル暴とは……恐れ入ったよ。」
幾度と無くふたりで事件を解決していくうちに、北条と灰島の間には確かな信頼関係が生まれていた。
「聞いたことあります?『氷の新堂』……。」
「あー、四課長に聞いたよ~。筋モノの怒鳴り声にも動じない、肝っ玉の据わった若手がいるって……って、もしかして……?」
「えぇ。そいつです。」
「驚いたねぇ……。カップル揃って期待の新人とは、警視庁もこれで安泰だ!」
「冷やかさないでくださいよ……。」
灰島は、自分のことを北条に話すようになった。
北条も、灰島の話は興味深く感じたのか、会話は弾んだ。
名実ともに、警視庁捜査一課の最強コンビ。
そう、周囲からは囁かれるようになった。
「ところで、どうして一課に?……やっぱり悪を許さぬ正義の塊?」
ある日、北条は灰島にこう訊ねた。
警察官になる者、動機は人それぞれである。
昔、命を救われた。
近所の交番勤務のお巡りさんが優しかった、カッコ良かった。
凶悪事件に立ち向かう姿に憧れて。
ドラマの影響
悪を純粋に許せないから。
あらゆる動機で警察官に志願し、そして警察学校でふるいにかけられる。
警察学校で、若者達はその想いがどれだけ本気なのかを確かめさせられるのだ。
「ずっと、追ってる事件があるんです。」
「警察を志す頃から?そんなに前から追ってるって……時効は?」
「とっくに時効が成立してしまってるんですが、証拠が何一つあがって来なかったんです。なにも分からないまま時効なんて……被害者は納得がいかないじゃないですか。だから、俺が刑事になって、必ず真相を暴いてやると……。」
このときの灰島の表情に、北条は何か鬼気迫るものを感じた。
「……身内?」
灰島が、驚いた顔をする。
「それだけ追いたい事件、他人じゃまず考えられないよね。身内の誰かが被害に遭った、そうじゃないかな~って。」
「……仰る通りです。妹が、暴行を受けました。」
灰島の顔が、みるみる険しくなっていく。
「まだ中学生だった妹が、当時大学生だった男に暴行された。そのせいで、妹は……。」
「……話してくれてありがとう。もういいよ。」
灰島の表情で、その先のことが容易に推理できた北条。
「妹の人生を奪った奴を、必ず俺は見つけてやりたい。逮捕はもう出来ないけど……ちゃんと詫びて欲しい。そう思うんです。それが、俺が警察官に志願した理由です。」
灰島の瞳には、炎のような強い光が見えたのであった。
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