黒ぶち猫は、今日もびしょ濡れ

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ずっと猫みたいな人だなぁって思ってた。 隣の席の(たまき)くん。 華奢な体に白い肌、サラサラの黒髪につりあがった目元。ポカポカした日の当たる場所が好きで、授業中によく居眠りしてて、気分屋でマイペース、寂しがり屋で飽きっぽい。口数は少なくて無愛想だけど、たまに優しい。 ほら、名前も性格も行動も全部が全部猫みたい。 今日だって、六限目から突然いなくなっちゃったし。放課後になった今でも姿が見えないって事は、時間を忘れてどこかで昼寝してるか、とっくに帰ったかのどちらかだろう。う〜ん、せめて週番の仕事はしていってほしかったなぁ……と恨みがましい視線を隣に送りながら、私は日誌に今日の出来事を埋めていく。まぁ、日誌以外の仕事はちゃんとやってくれたからいいんだけどね。 日誌を職員室に届けミッションコンプリート。昇降口で靴を履き替えた私は、急いで校舎裏に向かった。人気(ひとけ)のない静かなそこは、密かに私のお気に入りの場所である。 ……いた。 廃れたベンチに猫が一匹、気持ち良さそうに眠っている。白い体に黒が混ざったぶち猫。右耳から目の下にかけて黒く覆われていて、まるで人間の前髪のようだ。 私の気配に気付いたのかパッと目を開けると、「ナーオ」と可愛らしく鳴き声を上げた。私の頬がふにゃりとゆるむ。
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