2『銀河鉄道の夜』(第一夜)

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◆『銀河鉄道の夜』にはいくつもの顔がある  宮沢賢治さんは、そう、死の直前まで本作品の推敲を重ねられましたね。作者は宮沢賢治(37歳没)。未完成作品。そして彼のもっとも有名な長編童話。それが『銀河鉄道の夜』。  何度も推敲された本作の草稿は、彼の没後、年代を基準にして4段階に分けられます。こんにち、私たちが目にするのは、第3次稿、第4次稿、そして両者がブレンドされたものです。  特に、第3次稿と第4次稿との間には大きな違いがあります。たとえば、これらの草稿に基づいて、別人によって別々に編集された、岩波文庫版と新潮文庫版のあいだには、文字の表記や、ときとして表現自体、あるいは登場人物にまで異同があります。もちろんそれぞれに味がありますけどね。  というわけで、どのバージョンを読んだかにより、私たちの感想も変わっちゃいます。ここでは、第4次稿、すなわち「ブルカニロ博士」が登場しないバージョンに基づいて、少しばかり論じてみたいと思います。
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