紫築 みちるの場合

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 日町はタイミングの悪い男です。私の腕を掴んでいるところで、私をお迎えに来たらしい彼に遭遇してしまったのです。 「やっぱりお前浮気してたんだな! このアバズレ!」  こっちに来いと強く私は彼に引っ張られます。だって、私は愛されて、必要とされているから。愛しているものを自分の手元に置こうとする、そんなの普通のことです。私は強く愛されてるからこうして、痕が残るぐらい強く、引っ張られてーー 「紫築、ホントはわかってるんじゃない?」 「わかってるって何をです? ほら、日町。早く」 「紫築が目を覚まさないと誰も君を助けられないんだよ」 「そんなことはどうでも良いんです。だから、あの、日町」  “逃げて”ーーそのひと言は言えなくて、日町は彼に殴られてしまいました。 「何ごちゃごちゃ人の彼女に話してんだよ!」  日町が悪いのです。私と彼と間には深い愛情があって、誰一人だって邪魔は出来ないのです。ーー本当に?
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