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どこまでも、どこまでも追いかけて来そうだった彼は私を追いかけて来ませんでした。引っ越しを終えて3ヶ月後、夏の日差しが私の目の横に汗の通り道をつくります。けれども前のようにスースーしたりはしないのです。
私は今日は友達と一緒にカフェに来ています。私にはもう彼氏は居ません。けれど、私は幸運なことに都合のいい恋愛の運命がないことを身をもって経験したので慎重かつ冷静な恋愛相談をすることにしています。今度は、最後まで。
日町とはあれから殆ど話をしなくなりました。見かけてもお互いに知らないふりをしています。何故ならば”助けて欲しい”とレポート用紙を受け取った後にこのような会話をしたからです。
「紫築はこのことをキッカケに俺と疎遠になります」
「どうして?」
「紫築が俺に依存しないように」
依存、言われてみれば彼と私の関係はそうだったのかもしれません。しかし、自分に依存するかもしれないなんていうのは、日町の自惚れではないでしょうか。
「依存性の高い人が誰かに救われてしまうと、今度はその誰かに縋って生きていってしまう。それは依存先が変わっただけで何も解決しないんだ」
本当に困ったときだけ声をかけてと言い残して日町はどこかに去っていったのです。対価は卒業証書代わりにされたレポートの代筆なのだとか。
私の彼に何があったのかは私は全く知らないのですが、その日から突然プツリと縁が切れたように連絡もなくなりました。
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