第1章 出会い

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* 「悪い!これから急いで部活に行かなきゃなんなくってさ、黒板消しやっといてくんね?」 放課後、さっさと帰路につこうとした瞬間に言われたセリフがこれである。黒板消しは日直の仕事である。いわゆるパシリ。坊主頭の男が俺に手を合わせている。 「あ……う、うん……」 うんじゃねぇだろ俺!と言いたいところだが、無駄な争いは避けたいので渋々承諾することに。ここで断ると余計面倒なことになりそうだ。 「サンキュー!んじゃ、よろしくな!」 クラスメイトはそう言って颯爽と教室を後にした。去り際に「あと鍵と日誌も職員室に持って行ってくれると助かる!」という言葉を残して。 いや自分でやれよ!日直だろ!なんで日直じゃない俺がやらなきゃなんねぇんだよ!ついでにもう1つ仕事追加すんじゃねぇよ!という怒りが込み上げてくる。 あいつ何部だっけ?確か野球部だったっけな。野球部のやつらって毎日走って朝練やら昼練やら放課後の部活やらに行ってるけど、そんなに忙しいのか?雑用は1年や2年にやらせてるイメージがあるけど、高3もやること多いのか?なんて、性善説を推してるやつならこうやって同情するんだろうが、残念ながら俺は性悪説支持者なのでただひたすらパシられたことに苛立ちを感じていた。 ……ったく、とりあえず黒板消したらいいんだろ。仕方なく教壇に上がり、黒板消しを始めた。チョークの粉が鬱陶しいほど俺に襲いかかる。学ランが真っ白だ。窓を開けたいところだが施錠しないといけないし……。早く帰りたいから雑に消すと余計汚くなってイライラする……を繰り返していた。 何とか黒板消しを終え、服に付いた粉を払いながら後ろを振り返ると、教室にはまだ1人残っていた。しかもそいつは机に突っ伏して寝てやがる。 こいつは確か……
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