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物語の展開上、このパジャマ男が走る姿は何とも滑稽なことであろう。だが緩左内は走った。息が切れるまで走った。
仁志は何もできない自分に歯がゆい思いを抱いていた。等身大であればおそらく力で負けることはない。けれどこんな姿の俺にだって何かできることがあるだろう。
砂羽も冷静にこの戦況を分析していた。ケイがこの状況を望んでいないこともわかる。
なんとか形勢を逆転できる方法がないか。
しっかり観察した。すると、斜めに向いた大根の人で言うお尻あたりに一瞬何かが付いているのが見えた。あれは何だろう。
ケイは目を閉じ、何か呪文を唱えるような歌うような祈りを捧げだした。今のケイに出来ることをする。
緩左内の足がもつれる。息が切れる。
もう……限界がきている。
まさか大根に走力で負ける日が来るなんて。
大根に食われて人生を終えるのだろうか。
しかもこんな格好でこんな世界で。
無情にも大根との差はぐんぐんその距離を詰める。
皆を抱え、不安定な姿勢で走り続けた。
息が切れても、足をくじきながらも疾走した。
しかし、大根の腕(のようなもの)が、緩左内を捉えようとした。
その時──
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