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1ヶ月後。
私はあれから少しして、また元の広報課に戻った。
結局、岡崎社長の秘書は、高田さん一人になり、
もう少ししたら、香苗さんも仕事に復帰出来るらしい。
「永倉、この前のお前のキャッチコピー、プレゼン通ったから」
神沢課長にそう言われ、ヤッターと私は自分のデスクで喜んだ。
結婚して西村から永倉に姓が変わったけど、
最近はその名字に、私も周りも馴染んで来ている。
「恋も仕事も順調でいいな?」
「そうですね」
神沢課長の言葉に、そう頷くけど。
全てが順調では無くて、失ったものもある。
今もまだ、流産した心の傷は完全に癒えてないけど。
「私、本当に幸せなんです」
辛い時に、私にはいつも三咲が側に居てくれるから。
「文乃、お昼食べに行こう?」
うちの課に、三咲がそう言ってやって来た。
あれから、三咲が会社に居る時は、
そうやって、お昼ご飯を一緒に食べている。
今日の昼休みも、そうやって二人でランチをする為に、
会社のビルを出て歩く。
うちの会社は、飲食系だけど、食堂的なものはなくて、
ビルに入っている、うちが経営する飲食店で食べるか、外に出て食べるか。
お弁当を持って来るか。
「明日から、私お弁当作ろうか?
お昼だけとはいえ、毎日のように外食なのもよくないよね?」
結婚前の私は、たまにだけど、お弁当を作っていた。
「じゃあ、お弁当は俺が作る。
朝も夜も、文乃が用意してくれているから」
「えー、じゃあ、お弁当辞めよう」
三咲の方が仕事が忙しいから、負担をかけるのも悪いし。
「なにそれ?
俺が作るの気に入らない?
ハッキリ言って、文乃より俺の方が料理上手なのに?
夕べの文乃が作ったオムライスの卵だって、すごい焦げてたくせに」
また、この人は誤解して違う風に思っているのだと思うけど。
後半の発言にムカついて、その誤解を解く気にもなれない。
「は?何それ?
途中で三咲が私に抱き着いて来たり、キスして来たりするから、焦げてしまったんでしょ?」
「だったら、火止めたらいいじゃん」
「そんな余裕なんて、あるわけないでしょ?!」
私と三咲は、喧嘩ばかりなのだけど。
この先も、ずっと一緒に居る。
(終わり)
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