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それは、最終面接の日だった。
寝坊したわけじゃないけど、面接の時間にギリギリで、私は走った。
それ程ヒールが高いものではないけど、
普段スニーカーばかりの私には、それはとても不自由なもので。
着いた、と思うと同時に、
そのビルの前で転んでしまった。
「…いったぁ」
こんな風に転んだのは、子供の時以来だろうか?
手に鞄を持っていたせいで、
転倒する時地面に上手く手をつけなくて。
膝を思いっきり、擦りむいた。
その右膝から滲み出て来る血を見て、さらに痛みが増して来る。
「大丈夫?」
頭上から聞こえたその声に顔を上げると、目の前には男の人が立っていて。
その人の第一印象は、格好良いというより可愛い男の人だった。
「だ、大丈夫です」
私は恥ずかしさから、慌てて立ち上がる。
そんな私を見て、その彼は子供のような幼い顔でニコニコと笑っている。
だけど、私の右膝に視線を移すと、その笑顔が消えた。
「あー、血が出ちゃってるね?
痛い?」
「え、あっはい。
でも、大丈夫です」
私は鞄からハンカチを取り出し、
それを血が出る右膝に当てた。
後で薬局で消毒液とか買おうと思うけど、
今はこれで止血だけしよう。
それにしても、パンストは破けてしまったけど。
コンビニに買いに行ったら、完全に遅刻だろうな…。
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