ネクタイ

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シュルシュルという音がして、下げていた顔を上げると、目の前の彼は自身のネクタイをほどいた。 何してるんだろう?と、見ていると。 「これで押さえたらいいから」 そう言って、私のそのハンカチの上から、ほどいたネクタイを巻いてくれる。 それは、えんじ色でチェックのネクタイ。 「あ、あの、えっと」 「これで、よし」 「あ、はい」 見ると、包帯のように、そのネクタイは私の膝に巻き付いている。 「ネクタイあげる。 今から最終面接でしょ? 面接中、ずっと膝を押さえておくわけにいかないでしょ?」 なんで、私が今から面接だと分かったのだろう?と一瞬思ったけど。 今の私は、黒いいかにもって感じのリクルートスーツを着ている。 「受かるといいね。 君と一緒に働ける事を楽しみにしてる」 そうか。 この人は、この会社で働いているのか。 株式会社ブルークローバーグループ。 全国200店舗以上ある居酒屋[笑い鳥]を初め、 レストランやバーやカフェ等を数多経営し。 外食事業以外にも、最近はホテル事業も行っている。 支社は、北海道、名古屋、大阪、博多とあり、 私が面接を受けに来たのは、その本社。 その本社ビルは7階建てで、 一階と二階には、ブルークローバーグループが経営する、飲食店が数店舗入っている。 「じゃあね」 そう言って、私の横を通り過ぎた彼。 私はその場に、呆然と立ちすくんでしまう。 完全に、今ので恋に堕ちた。 そして、その後、私は無事にブルークローバーグループの内定を貰い。 大学卒業後、ブルークローバーグループ本社、マーケティング部広報課に配属された。
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