ネクタイ

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「何回も言ってるけど、香苗は社長の秘書だからな。 それ程、副社長と話す機会はないみたいだから」 「でも、チラッとでも話す機会があって羨ましい。 そんな私に、秘書課への辞令出てません?」 「ないよ」 この会社へと入社してすぐ、彼が副社長だと知り。 私は、秘書課への転属希望を何度も出している。 その為に、秘書検定も受け、なんとか二級に。 「いつか、永倉王子と仲良くなれるといいな? 夢見るシンデレラ」 そう何処か馬鹿にするように神沢課長は言うし、 それが聞こえた課のみんなも笑っているけど。 私には、ガラスの靴はないけど、 あのネクタイがある。 それをきっかけに、永倉副社長と仲良くなれるかも…なんて考えてはみるけど。 永倉副社長の事は、週に一度くらいチラッと社内で見れたらいい方で。 いつも彼の周りに人も居て、話し掛ける事なんて、出来ない雰囲気。 けど、向こうはもう私の事なんて覚えてないのかもしれない…。 永倉副社長の視界に私が入る事が今まで何度かあったけど。 特に、私を気にするような素振りはなくて。 あの時の子だよね?、とか、そうやって話し掛けられるのを、ずっと待ちわびて、二年以上過ぎた。
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