1708人が本棚に入れています
本棚に追加
「永倉副社長って、手先が器用なんですね?」
私の手首に相変わらず巻かれているネクタイも、
とても綺麗な蝶々結び。
「かもね」
気付くと永倉副社長は私のすぐ近くに立っていて、それにドキドキとした。
永倉副社長は男性としては小柄なので、目線がとても近い。
永倉副社長は、私の腕のネクタイを摘むと、シュルルと結びをほどく。
「ほどいちゃうんですか?」
暫くは、このまま結んでいたかったのに。
そのえんじ色のネクタイは、パサリと床に落ちる。
「そろそろ開けて、頂いちゃおうかな?って」
そう言った顔は、いつもの子供っぽい表情ではなく、男性を感じさせるくらい色っぽくて。
私の鼓動が、強くなる。
「永倉副社長…私…」
思わず、好きだと言ってしまいそうになる。
でも、もう胸がいっぱいで苦しくて、言葉が出ない。
ただ、こんな風に持ち帰られて、私がこの人を好きなのは、本人にバレバレなんじゃないかな?とは思う。
ふと、永倉副社長はどうなのだろう?と思う。
私の事を、どう思っているのだろうか?
「文乃…」
そう、呼び捨てで私の名を呼ばれ、
もう限界なくらいに胸がドキドキとした。
私の肩や頭の後ろに両手を回されて、永倉副社長の顔が近付いて来る。
目を閉じると、永倉副社長の唇が私の唇に重なった。
そのキスは、初めは啄むように、途中からは、舌が私の口の中に入って来て、私の舌を撫でるように触れて来る。
永倉副社長のキスは、飲んだお酒のせいなのか、とても甘かった。
最初のコメントを投稿しよう!