ネクタイ

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「永倉副社長って、手先が器用なんですね?」 私の手首に相変わらず巻かれているネクタイも、 とても綺麗な蝶々結び。 「かもね」 気付くと永倉副社長は私のすぐ近くに立っていて、それにドキドキとした。 永倉副社長は男性としては小柄なので、目線がとても近い。 永倉副社長は、私の腕のネクタイを摘むと、シュルルと結びをほどく。 「ほどいちゃうんですか?」 暫くは、このまま結んでいたかったのに。 そのえんじ色のネクタイは、パサリと床に落ちる。 「そろそろ開けて、頂いちゃおうかな?って」 そう言った顔は、いつもの子供っぽい表情ではなく、男性を感じさせるくらい色っぽくて。 私の鼓動が、強くなる。 「永倉副社長…私…」 思わず、好きだと言ってしまいそうになる。 でも、もう胸がいっぱいで苦しくて、言葉が出ない。 ただ、こんな風に持ち帰られて、私がこの人を好きなのは、本人にバレバレなんじゃないかな?とは思う。 ふと、永倉副社長はどうなのだろう?と思う。 私の事を、どう思っているのだろうか? 「文乃…」 そう、呼び捨てで私の名を呼ばれ、 もう限界なくらいに胸がドキドキとした。 私の肩や頭の後ろに両手を回されて、永倉副社長の顔が近付いて来る。 目を閉じると、永倉副社長の唇が私の唇に重なった。 そのキスは、初めは啄むように、途中からは、舌が私の口の中に入って来て、私の舌を撫でるように触れて来る。 永倉副社長のキスは、飲んだお酒のせいなのか、とても甘かった。
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