捨てられた子猫

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私の名前は『加瀬 亜里沙(かせ ありさ)』、市内の中学校に通う3年生の女子だ。 市立高校に進学する私は、高校受験を終えて無事合格し、春から市内の女子高に通うことが決まっていた。 私は徒歩で中学校に通学しているけれど、中学校に登校する途中の自宅から歩いて5分ほどの場所に小さな神社がある。 寒さが残る2月末のある日、私が中学校からの帰りにこの神社の脇道を歩いていると、神社の中から猫の泣き声が聞こえてきた。 私は一瞬立ち止まったけれど、気にせずに歩きはじめると、また猫の泣き声が聞こえてきた。 その猫の泣き声がどことなく弱々しく感じて、私は気になって神社の中に足を踏み入れた。 神社の賽銭箱の前に立って私が耳を澄ましていると、また猫の泣き声が聞こえてきて、私は猫の泣き声がする方に近づいていった。 猫の泣き声は少しずつ大きくなっていき、神社の境内の軒下に段ボール箱が置いてあることに気が付いた。 その段ボール箱は上蓋が開いていて、私が段ボール箱を手元に引っ張り出して中を覗き込むと小さな白い子猫が寒そうにうずくまっていた。 私は段ボールの横にしゃがみ込んで子猫に手で触れてみると、子猫は小刻みに震えながら目をまん丸くして私の顔をじっと見ていた。 「どうしたの?」 私が声をかけると、 「ミャー」 と子猫が小さな泣き声で答えてくれた。 この子猫は捨て猫かもしれないと思った私は、一旦段ボール箱を元の場所に戻して、近くのコンビニに行ってミルクと小さな紙皿を買って神社に戻った。 そして紙皿にミルクを注いで段ボール箱の子猫を抱いて紙皿の前に座らせると、子猫は私の顔をチラッと見てからおいしそうにミルクを飲み始めた。 ミルクを飲んでいる子猫を自宅に持ち帰りたかったけれど、きっと私の両親は子猫を飼うことを許してくれないだろうと思って、この子猫をどうしようか考えていた。 でも今の私には何もできないと思って、この日は子猫を段ボール箱の中に入れて、境内の軒下に戻して帰宅することにした。
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