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ダンスだって、歌だって。可愛くてきゅるんっとした曲だけやるわけではない。お笑いタレントがふざけてやりそうな歌やダンスを真剣に歌って踊ることもある。アイドルとしてのプライドをかなぐり捨てて、何でも一生懸命ある“親近感が沸くアイドル”というのが自分たちのコンセプトだった。
まあ、ようするに。
ちょっと面白いだけ、派手なだけ、の企画はやり飽きているほどなのである。特に、前回卒業したSACHIは派手好きお祭り好きの女子だったので、とにかくみんなで一体となって盛り上がるイベントを盛り込んだのだった。OMY83のライブは、歌って踊るだけじゃなくてそういったお客さんと一緒に楽しめるイベントがあるというのも売りの一つであり好評を得ているのである。つまり、貴子を楽しませつつ、お客さんのことも楽しませるような企画を考えなければいけないのだ。
「卒業ライブの会場、“エンエンホール”なんだよね、確か」
私は腕組みをして言う。そしてちょっとカッコつけた結果、目の前にあったおまんじゅうがかっさらわれた。食いしん坊のるみである。本当に油断も隙もありゃしない。
「エンエンホールってメインステージはデカいけど、観客席の縛りがきちーんだよなあ。SACHIの時みたいに、みんなが走り回れるような特設ステージはそもそも作れないんだよね。だからどっちみち、パン食い競争は却下」
「えー、宝探し競争を提案しようと思ってたのに!」
「あんたはただお菓子が食べたいだけやろがい!」
パンを食べたら、小麦粉まみれの道を通ってゴールするのが自分達のパン食い競争だったが。宝探し競争の場合は、そもそも小麦粉の中に顔をつっこんで飴玉を探すのが仕様である。より顔面を中心に粉まみれになれることだろう。
「そもそも、前回の競争で、私達は衣装を汚しまくったわけで。……衣装担当さんに大泣きされてるわけです、おわかり?今回はちょっと、衣装を汚しまくるような企画は避けないとあかんわけですよ」
「あー……」
そもそも、似たような競争をもう一回やったところで面白くもなんともない。
できれば、SACHIの卒業ライブとはまったく違うイベントを盛り込みたいところである。
「うーん、衣装を汚さないでってのが難しいよね。体張った企画はどうしても全身犠牲になるし、いろんな意味で」
もっくもっく、とおまんじゅうを頬張るるみ。
既にアイドルじゃなくて、頬袋いっぱい状態のリスみたいになっているがいいのだろうか。
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