卒業とベストフレンド

4/5
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
「みんなでまたコントでもする?コントキングダムでコントしたらすっごく好評だったじゃん。ほら、みんながそれぞれ、椅子とか机とか黒板とか校庭の木になってるのにさ、先生も生徒も誰もツッコミませんっていうやつー」 「あー」  少し前にやった、コント番組での企画である。メンバーのうち、二十五人を使っての盛大なコントだった。明らかに人間が机や椅子、黒板になっているのに転校生以外誰もおかしく思っていない、なんで!?という内容である。お客さんウケも良かった。まったく同じコントをやるわけにはいかないだろうが、あんな感じでひとつ劇のようなものをやれば、貴子も喜んでくれるだろう。  ただ。 「……面白いけど、却下かな。これは、パン食い競争系にも言えることなんだけど」  私はリーダーとして、正直な考えを伝えることにした。 「確かに、SACHIの時も盛り上がったんだけどさ。みんなはちょっと、違和感感じてなかった?なんていうかあの時は結局、私達メンバーがメインで盛り上がっちゃった感じでさ。お客さんも応援はしてくれてたんだけど、少なからず置き去りにしちゃってたと思うんだよ」  いつの間にか、焼肉目当てでレースを楽しむことに夢中で、お客さんを楽しませるためのライブであるという趣旨をみんな忘れてしまっていたような気がするのだ。  勿論、SACHIの卒業ライブだし、派手好きな彼女を喜ばせるという目的は達成できていたと思う。しかし、卒業ライブは本人のためだけにやるものではない。むしろ、ファンのために最後に楽しみを提供する目的でやるためのものでもあるのだ。  ファンが、一体感を持って、気持ちよくメンバーを送り出せないのでは、意味がない。あの時は少々、肝心なことを忘れてしまっていたような気がするのである。 「……レナレナの言うことは尤もだね。うちも、賛成」  うんうん、と頷いてくれたのは実質サブリーダであるリヨである。 「思ったんだけどさ。SACHIと比べて貴子って大人しいキャラじゃん?で、アイドルなのに過激なことが嫌いというか……できれば落ち着いて読書してたい系キャラというか。派手なイベントよりも、ファン一人一人とのつながりを大事にできるイベントの方が喜ぶと思うんだよね。そういう意味でも、前の時よりもファン参加型に特化した企画がいいと思うんだ」  それで、と彼女は続ける。 「貴子ってコアなファンも多いし。一つこういうの思いついたんだけど……どう?」
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!