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卒業とベストフレンド
OMY83。それは、埼玉県出身のアイドルグループである。OMYというのは大宮のこと。まあ、メンバー全員がさいたま市大宮区の出身というわけではないのだが。
当初はそんな大所帯でやっていけるわけがない!所詮はイロモノアイドルだろう、と言われていたグループ。それもデビューから一年、二年と過ぎるごとに徐々に評価を上げていき、六年目の今は押しも押されぬ国民的アイドルになりつつある。
十七歳でグループに入り、“レナレナ”という名前でデビューした一期生の私も今や二十三歳の立派な大人だ。そろそろ新しい道を考えるべきではないか、そう模索し始めているのは私に限ったことではなかったのだろう。
最古参メンバーの一人、貴子がついにグループを卒業することになったのだ。
彼女がずっと、アイドル以外に大きな夢を持ち、追いかけ続けていたことを私達は知っていた。彼女は私より一つ年上の二十四歳であるし、アイドルとして活動していくには潮時だったというのもあるだろう。淋しいが、応援したいという気持ちでみんないっぱいだった。ちょっと前にもう一人の古参メンバーである“SACHI”が卒業したばかりだから尚更である。
苦楽を共にした仲間だからこそ、新しい門出を全員でお祝いしたい。それはいい。いいのだが。
「どうしよっか……」
現在。貴子本人とやめたメンバーを除く最古参の一期生、八人で顔を付き合わせて楽屋で会議中である。今日は歌や踊りのトレーニングよりも、古参全員で会議することの方が重要だった。
何故なら、貴子の卒業ライブまでもう時間がないのである。
SACHIの時は、全員で盛大に卒業ライブを盛り上げたのだ、今回も、貴子がアッと驚くようなイベントやレクリエーションをして楽しい気持ちでお送りだしたいのだが。問題は。
「どんな企画やるのがいいんのか、全然思いつかない!」
これである。
はっきり言おう、SACHIの時にちょっと全力投球しすぎたのだ。おかげで、既に卒業イベントのネタが切れつつあるのである。
OMY83は、今でこそ本当に八十三人の大所帯を達成したが、実は開始当初はその半分の四十二人しか舞台に出ていなかったのだった。理由は単純明快、人が集まらなかったのである。クイーンレコードの元にオーディションを行ったわけだが、いかんせん“埼玉県民限定”というのがあまりにも地味すぎた。いや、全都道府県で比較すれば人口はいる方なのだろうが、どうにもイメージが良くなかったと言わざるをえない。
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