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夫妻が退去されたあと、客間のベッドで休む彼に、使用人が用意してくれたフルーツと栄養価の高いミルクを運んだ。
顔色がいくぶん良くなったエイブラムは「ああ」と頷き、長いまつ毛を伏せた。
「あの人たちのおかげで、今の自分があると思ってるよ。だからサミュエル家を父の代で終わらせずに、繁栄させるのが俺の勤めだ。良識のある妻を迎えて、子を成したら……きっと親孝行になると思う」
そう言ってじゃっかん遠慮がちな目を向けられる。
うっかり、ため息がもれた。今さらだと思ってしまう。
「あなたが望むなら……私に孝行の手伝いをさせて? これでも伯爵令嬢だから、世間に通用する良識は持ち合わせているつもりよ?」
「……そう、だな。そうしてくれると……。助かる」
語尾を小さくしながら俯いた彼に、りんごを食べさせようとすると「いや、」と続け、エイブラムが赤い顔で私を見つめた。
「こういうことは、ちゃんと言うべきだよな」
「……え?」
「マリーン。以前、俺はキミをそばに置きたいだけで攫ったわけじゃないと言ったけど……あれは嘘だ」
「……はい?」
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