111人が本棚に入れています
本棚に追加
「俺はキミを愛してる。生涯で妻にしたいと思ったのは、マリーンだけだ。だから……これからの人生もマリーンだけを愛し続けたい」
彼の口へリンゴを運ぼうとした手が空中で止まる。彼なりの愛の言葉が、変にくすぐったかった。
「ふふっ」と吹き出したあと、そのまま彼にリンゴを食べさせた。
「あなたの想いを止める人なんて、だれもいないわ。存分に愛してくれたら……私もその愛をお返しするだけ」
エイブラムは私を見つめたまま、コクンと頷いた。
「ご両親へ、改めてご挨拶をさせていただくわね?」
言いながら口角を持ち上げると、エイブラムに腕を引かれ、ギュッと抱きしめられた。彼の体温に心地よい痛みが走る。
手にしたフォークを空中で手放し、私も彼を抱きしめた。
至近距離で目が合い、自然とお互いの唇が近づいた。
……愛してる。
目を閉じながら、エイブラムへの想いの丈を長い口付けで伝えた。
*
「父と子と聖霊の御名によって、アーメン」
組んだ両手の先に、十字架の描かれた白い墓石があり、私はふぅ、と息をついた。供えた白い菊の花弁が風に煽られて揺れている。
「大丈夫か、マリーン」
最初のコメントを投稿しよう!