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私のお腹に片手を当てながら、彼は深い眠りへと誘われた。
「この子は幸せね」
両親の愛情を一心に受けて生まれてくる我が子を想った。
エイブラムと共に幸せな家庭を築くのが、私の夢だ。
先に眠ってしまった彼に毛布をかけて、その体温にぴたりと寄り添うようにして、一度目を閉じた。
彼が私を迎えに来てくれるまで、私はずっと愛に飢えた子供だった。
家族である親姉弟に愛されるため、完璧を求めたけれど、それも叶わず、自分への失望だけがただただ増えていった。
現状を変えられない私を、変えてくれたのはあなた。
辛い現実を教えてくれ、前に進む力をくれた。
エイブラムが居れば、私にはもう、なにひとつ怖いものなんてない。
悪夢はとうに過ぎ去った。少年が亡くなる夢を見て、もう二度とうなされることもない。
「おやすみなさい」
子供のような寝顔で目を閉じる夫の頬へ、私は軽く口付けを落とした。
***END***
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