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裁縫や乗馬、ダンスといったお稽古事に関しても、同じところで何度もつまづき、なかなか上達しない。さっきのピアノがいい例だ。
「姉様はなにごとにも慎重で臆病すぎるのよ、エイッて勇気をだしてもっと要領よくやらなきゃ」
四歳下の妹はそう言っていつも無邪気に笑う。そうね、と同意して笑うのが精一杯だ。
私には妹のほかに弟もいる。五歳下で、今日も騎士になるための訓練を宮廷で行うため、家を空けているはずだ。
姉弟でこうも教養の差が出てしまうのは、なにかの罰なのだろうか。そんなことすら考えてしまうことがある。
「元気をだして? まさかそんなしょぼくれた表情で舞踏会にでるつもり?」
「そのことなんだけど、クリス……私やっぱり今夜は」
「だめよ。ミューレン家の長女が舞踏会に出席しないなんて、そんなことあってはならないわ。ぜったいだめ。お父様とお母様が恥をかくもの。それに姉様は……みてくれは美人なんだから、堂々と胸を張っていればいいの」
「えぇ」
舞踏会も苦手だ。社交界デビューを果たしたのは、もう七年も前のことだが、結婚を申し込まれたことはただの一度もない。お父様やお母様から縁談を持ち込まれたこともない。教養の身につかない低脳な私は、だれにも選ばれない。
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