0人が本棚に入れています
本棚に追加
終話 訓練卒業
俺は数ヶ月訓練を続けた。体が筋力を増し育ち盛りの俺は、2倍の重さの剣をやすやすと振り回される事なく、その勢いを殺さず生かす柔軟な体運び。
攻めの一撃を乗せる剛の体さばき、師匠にはまだまだ及ばないが、数ヶ月前の青い俺と違って、自分でも驚くほどの体さばきを体得した。
間違いなくこれは、数ヶ月重ねてきた俺の努力、ひとつ、ひとつ解ってしまえば、それまでのモヤモヤな不安が理解される。
剣でも流派で型は異なるが、師匠の雲型流は柔を重んじる。
ハッキリ言えば無手型、つまりどんな相手でも攻めを受け止めるのではなく、受け流す体さばき。
剣では打ち合わすより、攻撃を受けない立ち回りと言った所か。
とにかく相手の観察に重きを置き、攻撃に攻撃をぶつけ合うのではなく、避けた攻撃の隙間に挟み込む。
なんでも逃げる相手は、よほどじゃないと追い掛けない、師匠が。
「よし、君の特訓の成果を魔物にぶつけて来い」
「えっ、魔物?」
勝ったけどブルーウルフを思い出すと、苦い思いをする。師匠は。
「では、行こう」
ちょっと問答無用なんだが、闘技場に向かう。しかもなぜだか観客が居る前で俺とクモ型の魔物との戦闘が始まる事に。
多脚のクモがカサカサと足をうならせ向かってくる。
大きいクモは気持ちが悪い、本能がヤバいと警告していた。まずはおさらい、動きの観察。基本だ。正面になるべく立つな、鉄則だ。
向かれたら常に注意を怠らない、クモ型の魔物はそこら辺に、くっつきそうな粘着の糸を吐く。捕まったら動けなくなるんだろうか。
放り出された以上、しっぽを巻いて逃げる訳には行かない。
最初のコメントを投稿しよう!