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「放たれた呪は放った者に返すのが道理である。自身を信ずる者たちを形代にする者になど容赦はいらぬだろう。ましてや何も知らぬ幼い子らに凶行を強いるなど」
玉彦は唇を噛み締め私を見たので、私も同じ気持ちで頷く。
「でも呪を返してしまって良かったの?」
「問題あるまい。どうせ西が動くのだ。緒方の所業だと思うであろう」
「おれかよっ! おれのせいにすんのかよっ!」
「宣戦布告をしてやったのだ。感謝するが良い」
「感謝しねぇよ! 警戒させてどうすんだ!」
「警戒したところでどうしようもできまい」
「できたらどうすんだ!」
「……緒方に呪が放たれるくらいであろう」
「それは困るな! ふざけんな!」
玉彦と緒方さんの掛け合いを聞いていると豹馬くんが戻り、一緒に来た多門は中に入らずにスススッと襖を閉めたのだが目ざとく緒方さんが多門を見つけ、そこからはいつものパターンで多門が絡まれ、緒方さんから解放された玉彦は私たちの後ろに座った豹馬くんにパンフレットを渡した。
私の経緯の説明を聞きつつ、パンフレットを読んでいた豹馬くんは訝し気に眉を顰め、それから永浜さんにパンフレットは貰って良いかのかと尋ねた。
永浜さんが頷くと豹馬くんはパンフレットを作務衣の懐に仕舞ってから腕を組んだ。
そして玉彦に顔を向ける。
「澄彦様は動かない、んだよな?」
「動かないのではない。動けないのだ」
「そうなの? 澄彦さん、動けないの?」
玉彦の返答に私が聞き返すと、玉彦は首肯した。
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