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台所のダイニングテーブルには稀人三人となぜか洸姫が席に着いていた。
夕餉の支度までは竜輝くんが居たけれど、家へ帰ったようだった。
洸姫は先ほど食事を済ませていたので食べてはいないが、ずーっと学校での出来事を話しており、父親たちは、うんうんと聞いてくれている。
豹馬くんと多門は半分聞き流してるっぽいけど須藤くんは相槌に時折質問も交えたりなど親身だった。
さっきの夕餉の席では玉彦が話し出さなかったので無言の夕餉だったから、ここで洸姫が爆発した感じだろう。
私は自分の湯呑みを戸棚から出し、テーブルに置かれていた急須からお茶を注いで洸姫の隣に座った。
洸姫の向こうには須藤くんが居り、対面に豹馬くんと多門が座っている。
洸姫が居る手前、日中の話は出来なかったが、私は豹馬くんに言わなければいけないことがあった。
「豹馬くん。おめでとう。玉彦から聞いたわ。これから大変だけど楽しみね」
私がお祝いを伝えれば豹馬くんは箸を止めて珍しく笑った。
「ありがとう。でも上守も大変になるだろ? 玉様、なんか閃いてたぞ?」
「あぁ……まぁなるようになるわよ」
と、私と豹馬くんが話していると洸姫が興味津々に話に乗って来た。
「えー。お父さん、良いことあったのー?」
「お母さんに子供が出来たんだ」
「あっやっぱりかー。洸姫、知ってたよ。だってトイレのナプキン一月から減らなかったもん」
あっけらかんと恥ずかし気もなく女の子事情を口にする洸姫に私は彼らがどんな家族関係を築いてきたのか垣間見えた気がした。
「男の子とか女の子とかもう判ってる? まだ?」
「まだ。生まれてからのお楽しみ、だ」
「そうなのー!? えぇー、待ちきれなーい!」
まるで自分の弟妹が増えるかのように喜ぶ洸姫を見て、本当の弟妹が増えることになったらもっともっと喜んでくれるかも、と私は思った。
思春期で難しいお年頃に弟妹が増えると両親のアレコレをリアルに想像して嫌がる子もいるというが、洸姫はそうではないようだ。
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