大望

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私は古い商家に長男として生まれた。 昔は都でも一、ニを争うほどの隆盛を誇っていたそうだが、あまり商売熱心とはいえない祖父と父の代を経て、家業は見る影もなく傾きつつあった。 たまたま私の学業の成績が優秀であったのは幸か不幸か。 家族だけではなく親戚までもが、残り少ない財産を私につぎ込んだ。 そうでなければとても乗り切ることのできない世界だ。 官吏の登用試験に至るまでの道のりは、遠く険しいものである。 準備のための国立学校へ入るだけでも、一時の休憩も許されないほどなのだ。 一族の中で官吏が出ればその家は安泰。 そんなものを全部背負って、私は国立学校に入学した。 ここからはみな足並みを揃えて、ではない。 入学も至難の業だが、卒業できるのはほんの一握りだ。 誰かを蹴落とさなければやられるのは自分。 誰もが食事の時間と睡眠を極限まで削り、学友は次々に欠けてゆく。 ようやく卒業にこぎつけても、今度は本番の登用試験が待っている。 私たちはその試験で更にふるいにかけられる。 地獄と呼ばれるものだ。 三日三晩続く試験は過酷なもので、食べ物は喉を通らず僅かな眠りさえも妨げる。 それが複数回繰り返されるのだから、狂い、病に倒れる者も少なくなかった。 私は、登用試験に合格した。 一族が歓喜に酔いしれている間に家を出た。 4f133500-2dd6-4a9d-8619-a70fa4deb3f9
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